中小企業がM&A資金を調達する3つの方法|自己資金・融資・ファンドの活用法とは?

中小企業がM&Aを成長戦略として取り入れる動きが加速する中で、ネックとなりやすいのが「資金調達」の問題です。「自己資金だけでは不安」「銀行はなかなか貸してくれない」そんな悩みを抱える経営者も少なくありません。
本記事では、M&Aに必要な資金の調達方法を3つの視点(自己資金・融資・ファンド)から解説します。実行事例や選び方も紹介しながら、自社に最適な資金調達戦略を見つけるヒントを提供します。
目次
なぜ中小企業にとってM&A資金調達が難しいのか?
中小企業がM&Aを実行しようとする際、多くの企業が資金調達でつまずきます。その背景には、大企業と比べて信用力や資金体力が弱いことに加え、M&A特有の費用構造があることが挙げられます。
- 信用力や担保が乏しい企業が多いため、金融機関の融資審査に通りづらい傾向があります。特に無担保での融資は難しく、資金調達に時間がかかるケースが少なくありません。
- M&Aでは、「のれん代」や「仲介手数料」など独特の支出が発生します。これらは設備投資とは性質が異なり、金融機関側も審査に慎重になります。
- 自己資金のみでまかなうと、手元資金の圧迫や成長投資余力の低下につながる恐れがあります。買収後の運転資金や統合費用を考慮しないと、経営が不安定になるリスクも考えられます。
そのため、中小企業がM&Aを成功させるには、早い段階から調達手段を検討し、複数の資金源をうまく組み合わせる「戦略的資金調達」が欠かせません。
資金調達手段① 自己資金+社内リソース
自己資金や社内に蓄積された資産・リソースを活用してM&Aを行う方法は、最もシンプルでスピーディな手段です。特に小規模な買収やグループ内再編ではこの方法がよく使われます。ただし、長期的な視点での資金計画やリスクマネジメントが重要になります。
利用されやすいケース
- 小規模M&A(1,000万円以下)やグループ会社同士の譲渡
- 経営者が事前に事業承継や成長投資の準備をしていた場合
メリット
- 借入不要で迅速な意思決定が可能
- 外部への情報開示が不要で、秘密性が高く保たれる
- 返済リスクがないため、財務の健全性が維持されやすい
デメリット
- キャッシュを多く使うため、運転資金や将来の投資資金が圧迫される可能性がある
- 自社だけで負担するため、他の選択肢と比べて資金調達の柔軟性に欠ける
- 成功するM&Aに必要な資源やノウハウを十分に得られない場合もあるキャッシュが枯渇し、運転資金や設備投資に影響
- リスク分散の観点では劣る
資金調達手段② 銀行融資・信用金庫・政府系支援
銀行や信用金庫などの金融機関からの融資は、中小企業がM&A資金を調達するうえで最も一般的な手段の一つです。また、日本政策金融公庫など政府系金融機関による支援も活用できます。これらの手段は、M&Aの目的や買収対象企業の内容に応じて適切に使い分けることが重要です。
主な手段
- 一般銀行のプロパー融資(信用保証協会付き・無担保ローンなど)
- 日本政策金融公庫の「挑戦支援資金」や「中小企業経営力強化資金」などの制度融資
- 地方自治体や商工会議所が実施する事業承継支援融資や保証制度
審査ポイント
- 買収対象企業の収益力・将来性:買収先の事業が安定して収益を生むかどうかが判断材料になります。
- 買収後の事業計画と返済計画:M&A後の統合戦略や資金繰り計画の具体性と実現可能性が問われます。
- 自社の信用力・財務体質:債務超過の有無、自己資本比率、過去の業績などが審査の基礎となります。
補助金も活用可能
金融機関からの融資に加えて、補助金制度を組み合わせることで自己資金の負担を大きく軽減できます。
- 例:事業承継・引継ぎ補助金(経済産業省)では、買収費用や専門家費用の一部が支援対象となります。
金融機関との関係性構築や資料作成の精度が審査通過に直結するため、専門家との連携が成功の鍵となります。
【出典:中小企業庁(経済産業省) 官報】
資金調達手段③ ファンド・投資家の出資
ファンドや個人投資家からの出資を受けてM&A資金を調達する方法は、自己資本の強化と同時に経営支援も期待できる選択肢です。特に成長戦略型M&Aや事業再生型M&Aにおいては、財務面だけでなくノウハウ面でも強力なバックアップが得られる可能性があります。
活用可能なファンド例
- 事業承継ファンド:後継者不在企業の承継支援を目的としたファンド
- 地域活性化ファンド:地方銀行や自治体系が地域振興を目的に運営
- プライベート・エクイティ(PE)ファンド:経営支援・企業価値向上を目的に中長期で関与
メリット
- 借入ではなく自己資本として調達できるため、財務健全性が維持しやすい
- 経営経験やネットワークを持つファンドからのハンズオン支援(経営ノウハウ・人材等)が受けられる
- ファンドの信頼性が、次の融資や補助金活用の後押しにもなる
注意点
- 経営への関与度が高い場合、意思決定に制約が出ることもある
- 出資比率やEXIT(投資回収)条件について、事前の明確な合意が不可欠
- 上場準備や株式譲渡による回収を視野に入れた「中長期の経営方針」が求められる
- 出資比率やEXIT(売却)条件に合意が必要
自社の経営ビジョンとファンド側の方針が一致するかどうか、慎重に見極めることが成功の鍵です。
その他の選択肢
上記の3つの主要手段以外にも、目的や企業の状況によっては以下のような資金調達手段を活用することが可能です。
- ノンバンク系融資:メガバンクや信用金庫以外の金融会社から受けられる融資で、スピード重視の場合や担保を提供しにくい場合に選択されます。事業性融資や売掛債権を担保にしたABL(アセット・ベースト・レンディング)などが代表例です。
- クラウドファンディング型資金調達:地域住民や応援者から小口出資を募る仕組みで、地域密着型M&Aや社会的意義のあるプロジェクトで活用されています。資金調達と同時に地域ブランディング効果も期待できます。
- 地方自治体や都道府県によるM&A補助金・助成金:国の制度以外にも、各自治体が独自に運営している支援制度があります。たとえば、商工会議所経由での申請や地域限定の事業引継ぎ支援補助などが該当します。
これらは補完的な手段として、他の資金調達方法と併用することで柔軟な資金計画を構築するのに役立ちます。
目的・状況別「調達方法の選び方」
M&A資金の調達方法は、企業の経営状況やM&Aの目的によって最適解が異なります。すべてのケースで同じ手法が通用するわけではなく、目的に応じて調達手段を組み合わせることが鍵となります。以下のチャートは、代表的なケースごとに適した調達手段を整理したものです。
目的・状況 | 推奨手段 |
小規模な買収・すぐに実行したい | 自己資金+銀行融資 |
成長戦略・多店舗展開・ノウハウ獲得 | ファンド+融資の組み合わせ |
代表者が高齢で事業承継M&Aを検討 | 政府系融資+補助金 |
財務体質が弱く借入が難しい | クラウドファンディングやノンバンク融資 |
地域密着型・社会性の高い買収 | 地域ファンド+自治体支援金 |
このように、自社の現状や将来戦略に合わせた資金調達プランを立てることが、M&Aの成功確率を高める大きな一歩となります。
M&A資金調達のリアルな成功事例
■ FUNDiT株式会社によるファンド調達によるM&A強化(2024年7月)
中小型IT事業のロールアップ戦略を推進するため、Dual Bridge CapitalやかんぽNEXTなど複数のファンドから第三者割当増資を実施し、資金調達に成功。100件以上のM&A実行体制を強化しています。
【出典:株式会社FUNDiT│PR TIMES】
■ テックタッチ株式会社による公庫融資による資金調達(2023年2月)
日本政策金融公庫より約2.5億円の新株予約権付融資を受け、M&Aおよび事業拡大資金として活用。調達資金で開発人材確保や技術強化を進め、SaaS事業の成長を加速しています。
【出典:テックタッチ株式会社│公式プレスリリース】
まとめ|中小企業こそ“資金調達型M&A”で飛躍を
中小企業にとって、M&Aは単なる成長手段ではなく、後継者不在や人材不足といった構造課題を乗り越える大きなチャンスです。しかし、その実現には資金調達の壁が立ちはだかります。
本記事で紹介したように、自己資金・融資・ファンドの各手段にはそれぞれ特徴があり、目的や状況に応じて最適な組み合わせを選ぶことが成功の鍵となります。調達戦略を早期に立て、制度融資や補助金、外部資本も賢く活用することで、M&Aの実行可能性は大きく広がります。
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