きっかけはお客様からM&Aの相談を受けたこと
M&A仲介事業を始めたきっかけは、長年お付き合いしてきたお客様からのご相談でした。当社はもともと、財務コンサルティングおよびIPOコンサルティングを通じて、多くの企業様の成長を支援してきました。その中で、「今ある事業をさらに成長させたい」「新たな事業展開のためにM&Aを検討したい」というご相談が増えるにつれ、M&A仲介を正式な事業として立ち上げるべきだと確信するようになりました。
2015年頃に本格的にM&A事業部を設立して以降、上場会社はもちろん、中堅・中小企業のオーナー様からも幅広くご相談をいただけるようになりました。また、私自身が税理士であることから、東京税理士会の主要支部においてM&Aに関するセミナーを継続的に開催しており、税理士ネットワークを通じた事業承継支援にも力を入れています。さらに、グループ会社である税理士法人・社会保険労務士法人クリアコンサルティングと連携することで、M&Aに伴う税務・労務面まで一体的にサポートできる体制を整えています。
実家の廃業という後悔、そして今の使命へ
M&A事業への想いを語るうえで欠かせないのが、実家の廃業という経験です。私は3代目として生まれましたが、自ら会社を設立したこともあり、実家の紳士服縫製会社は廃業することになりました。両親からは家業を継いでほしいという意向を伝えられていましたが、子供心に反発心もあり、家業を継がず自分でビジネスを立ち上げたいと考えるようになりました。
「スーツを作るのではなく、スーツを着て仕事をしたい」という思いで独立した私は、実家が廃業したことで、継がずに済んだという安堵を覚えていたのも正直なところです。
しかし今、事業承継の仕事に携わる中で、あの廃業がいかに両親にとって辛いものであったかを痛感しています。もし当時の私に今の知見があれば、家業を立て直すための具体的な提案ができたはずです。この後悔が、オーナー様の大切な会社と従業員を守りたいという、私のM&Aへの原点になっています。
印象に残ったエピソード
あるとき、中小企業のオーナー様が上場会社に株式を譲渡された案件がありました。そのオーナー様は70代で、約40年にわたって会社を率いてこられましたが、ご高齢を機に株式譲渡を決意されました。
調印式の場で、オーナー様は「自分の娘が嫁いだ時よりも寂しくて、心配だ。自分のこれまでの人生そのものを渡すような想いだ。どうか社員のことを本当に大事にしてほしい」と声を震わせながらお話になっていました。買い手の社長様をはじめ、会場にいた全員が目に涙を浮かべながらオーナー様の話に耳を傾けていた場面を今でも鮮明に覚えています。
株を渡すということは、自分が大切に育ててきた会社そのものを託すことです。そのような人生の重大な場面に立ち会えたことは、M&Aコンサルタントとして深く心に刻まれる経験でした。M&Aは関わるすべての人の人生を変える仕事である。その使命感を改めて強く感じた瞬間でした。
激動する時代の中で
近年、日本の中小企業を取り巻く環境は大きく変化しています。経営者の高齢化と後継者不在の問題は一層深刻化しており、廃業を余儀なくされる企業が後を絶ちません。加えて、人手不足・労働力不足は業種を問わず経営の根幹を揺るがす課題となっています。円安・物価高によるコスト上昇が続く中、AIをはじめとする技術革新は産業構造そのものを塗り替えつつあります。こうした変化は、企業にとって脅威であると同時に、M&Aを通じた事業の再編・強化によって活路を開くチャンスでもあります。
そのような時代だからこそ、私たちの仕事の意味はより大きくなっていると感じています。コロナ禍のような未曾有の危機においても、私たちは経営難に直面した企業に寄り添い、廃業や解雇を未然に防ぎながら事業の存続を支援してきました。そうした経験を通じて社員も大きく成長し、家族や仲間から尊敬される存在となっていることは、経営者として何より嬉しいことです。時代がどう変わろうとも、一社でも多くの企業が次のステージへ進めるよう、全力で支援してまいります。
今後の展望
M&A市場は拡大を続けており、経営者の高齢化や親族内承継の減少を背景に、M&Aの年間成約件数は年々増加し、M&Aが活用される業界も広がり続けています。私自身、家業を継がなかった一人として、後継者不在の問題がいかに切実であるか身をもって理解しております。
時代がどれだけ変わろうとも、私が大切にしてきた理念は「誠実さ」の一言に尽きます。オーナー様の人生に寄り添い、最良の選択を共に考える。その姿勢を変えることなく、これからもお客様の支援に努めてまいります。