M&Aにおける必要書類「基本合意書」(MOU)とは?事業承継において「基本合意書」が重要な理由について解説

中小企業のM&A・事業承継では、「売却を決意した経営者」と「買い手」が一定の条件について合意した時点で取り交わすのが「基本合意書(MOU)」です。この書類は、最終契約の前に交わす“仮契約”ともいえる存在で、取引の大枠と信頼関係を確認するための重要な一歩となります。

本記事では、M&Aプロセスにおける基本合意書の意味や役割、記載項目、注意点などを、事業承継を検討中の方に向けてわかりやすく解説します。

基本合意書とは?M&Aの中での位置づけ

基本合意書とは、M&A交渉を本格化する前段階で、売り手と買い手が「どのような条件で交渉を進めるか」を仮に合意するための書類です。最終契約ではないため拘束力は限定的ですが、交渉を継続する意思の確認と、今後のスケジュールを明文化する重要な役割を持ちます。

- M&Aの流れと基本合意書の位置づけ

ノンネーム資料 → NDA締結 → 企業概要書(IM) → 意向表明書(LOI)

★ 基本合意書(MOU)

デューデリジェンス → 最終契約 → クロージング

- 意向表明書との違い

意向表明書は、買い手側が「この条件で御社を買収したい」といった初期の意思を売り手に示すためのもので、提出者は買い手一社のみ。法的な拘束力は原則としてなく、主に「価格帯」「スキーム」「今後の交渉の意思」などが記載されます。

一方で基本合意書は、意向表明書を経て、売り手・買い手双方が「この方向で交渉を進めましょう」と合意したことを確認し、文書に残すステップです。排他交渉義務や秘密保持条項など、一部に法的拘束力を持つ内容が含まれる点でも、意向表明書と異なります。 簡単に言えば、意向表明書は“片思いの申し出”、基本合意書は“付き合い始めの取り決め”のようなものです。

- 最終契約書との違い

基本合意書と最終契約書の最大の違いは、「合意の確定性と拘束力」です。
基本合意書は、買収条件の大枠について“仮合意”する文書であり、譲渡価格やスケジュール、スキームといった全体像を共有し、今後の交渉をスムーズに進めるための“道しるべ”のような役割を果たします。ただしこの時点では、交渉の継続が前提であり、内容が変更される余地も大きく残されています。
これに対して最終契約書(正式には株式譲渡契約書や事業譲渡契約書など)は、M&A取引のすべての条件が確定し、法的な責任が生じる「本契約」です。価格、譲渡日、表明保証、誓約事項、損害賠償の責任範囲など、実務的かつ詳細な条項が明記され、署名・押印によって双方に履行義務が発生します。
つまり、基本合意書は“これから本契約に向かって話を進めましょう”という仮の約束、最終契約書は“条件が整ったので正式に売買を成立させます”という最終合意を意味します。

基本合意書の目的と役割

  • 価格やスキームなど、交渉の前提となる条件を仮に整理する
  • デューデリジェンス実施に向けての共通認識を構築する
  • 買い手を1社に絞る「独占交渉権(排他条項)」を明文化する
  • 両者の信頼関係と意思の確認を行う

基本合意書の記載項目

基本合意書に記載する主な項目は以下のとおりです。

項目内容の例
譲渡スキーム株式譲渡、事業譲渡、合併など
譲渡価格金額またはレンジ、評価方法(EBITDA倍率など)
DD実施予定会計・税務・法務・人事など、実施内容と期間
排他条項独占交渉権の期間、違反時のペナルティ
スケジュール契約予定日、クロージング予定日など
秘密保持NDAに基づく再確認、および範囲
解除条項合意破棄や交渉中止が可能な条件

※ 排他期間は1~2ヶ月程度が一般的です。

基本合意書を締結する際の注意点

① 排他条項に注意:交渉の自由が制限されるため、期間や解除条件を明記する必要があります。

② 曖昧な表現を避ける:「価格は今後協議」などは後のトラブルのもとになります。

法的リスクの把握:拘束力のある条項については、弁護士による確認が推奨されます。

基本合意書を省略すべきでない理由

M&Aのプロセスにおいて、基本合意書(MOU)を締結せずにいきなりデューデリジェンスや最終契約に進もうとすることは、航海図を持たずに出航するようなものです。取引を円滑かつ安全に進めるためには、基本合意書は欠かせない中間ステップといえます。その理由を解説します。

① 交渉の前提条件を明文化し、後戻りを防ぐため

M&Aは、譲渡価格やスキーム、スケジュールなど、細かな合意が積み重なって成り立つ取引です。これらの大枠について、口頭のやりとりだけで進めると、「言った・言わない」の認識のズレが発生し、後工程での軋轢に繋がります。基本合意書を交わすことで、「どこまで合意していて、どこからが未確定なのか」が明確になり、交渉の土台を安定させることができます。

② 独占交渉期間を確保し、集中した交渉環境をつくるため

M&Aでは、売り手が複数の買い手候補と並行して交渉しているケースも少なくありません。買い手にとっては、多大な時間とコストをかけてデューデリジェンスを行う以上、「この取引は自分たちに向いて進んでいる」という保証が必要です。基本合意書に含まれる「排他交渉条項(独占交渉権)」は、こうした安心感を与え、交渉をスムーズに進める心理的・実務的基盤となります。

③ 信頼関係を可視化し、トラブルリスクを低減するため

M&Aは、数字だけでなく「相手と信頼関係が築けるか」という点が非常に重要です。特に事業承継型のM&Aでは、従業員や取引先の引継ぎも含めた長期的な関係性を築く必要があります。基本合意書を取り交わすことは、「お互いが誠実に交渉する姿勢を持っている」ことの証明でもあります。たとえ法的拘束力が限定的でも、この文書が存在するだけで、互いの責任感と交渉の本気度が可視化され、不要なトラブルや不信感を未然に防ぐ効果があります。

④ 交渉の“出口戦略”を設定する役割も担う

基本合意書には、解除条項や交渉が不調に終わった際の対応についても記載されることがあります。これは、後々の“撤退”や“条件変更”をスムーズに行うための重要な仕掛けです。これを省略してしまうと、交渉の中止ややり直しが感情論になりやすく、予期せぬ損害賠償の主張や関係悪化を招く恐れもあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 基本合意書を結ぶと売却が確定しますか?
→ いいえ。あくまで仮合意であり、最終契約で正式に確定します。

Q. 基本合意書に価格は必ず書く必要がありますか?
→ 明記するのが望ましいですが、「価格帯」や「算定式」でも構いません。

Q. 拘束力がある条項はどれ?
→ 排他交渉、秘密保持、損害賠償に関する条項などは法的拘束力を持ちます。

まとめ|基本合意書を正しく理解し、後悔のない事業承継を

基本合意書は、M&A交渉において双方の方向性をすり合わせるための“設計図”のようなものです。
この書面をいい加減に作ってしまうと、後のデューデリジェンスや契約交渉でトラブルを招くこともあります。

事業承継をご検討中の経営者様は、基本合意書の意味とリスクをしっかり理解したうえで、信頼できる専門家とともに進めることをおすすめします。


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