M&Aのデューデリジェンス(DD)に必要な書類一覧|事業承継を成功に導く準備と注意点

【2025年10月更新】

M&Aにおける「デューデリジェンス(DD)」とは、買い手が売り手企業の実態を把握し、リスクや企業価値を評価するための重要な調査プロセスです。
この段階で提出する書類の内容・精度によって、取引スピード・条件・価格評価が大きく変わることも珍しくありません。

特に中小企業の事業承継では、「どこまで資料を整備できているか」が信頼性の判断基準となり、買い手企業の安心感にも直結します。
本記事では、M&Aのデューデリジェンスで必要となる書類を5つの分野に分けて整理し、準備のポイントや注意点をわかりやすく解説します。

デューデリジェンス(DD)とは?M&Aにおける目的と位置づけ

デューデリジェンス(Due Diligence:DD)とは、買い手が売り手企業の経営実態や潜在的リスクを調査する「企業精査プロセス」です。
通常は基本合意書(MOU)締結後に実施され、財務・法務・税務・人事・事業など多方面から確認が行われます。

調査の結果、簿外債務や契約リスクが見つかった場合には、譲渡価格や契約条件が修正されることもあります。
つまり、デューデリジェンスは「最終契約前の最重要ステップ」であり、売り手企業の信頼性と情報開示力が試される段階です。

デューデリジェンスに必要な書類一覧

M&Aのデューデリジェンスで提出が求められる主な資料は、次の5領域に分類されます。

分類主な書類の例買い手が確認する主なポイント
財務決算書、試算表、借入金明細、在庫リスト利益の継続性、資産実態、簿外債務の有無
法務定款、登記簿、契約書、株主名簿、許認可証契約リスク、訴訟・法令違反、譲渡制限の有無
税務申告書、税務調査記録、納税証明書納税適正、追徴リスク、繰越欠損金の確認
労務就業規則、雇用契約、給与台帳、社会保険資料雇用環境、未払い残業、社会保険適正
事業顧客リスト、売上構成、知財資料、販売チャネル取引安定性、競争力、収益構造の健全性

分野別に見る「必要書類」と買い手が注目するポイント

M&Aにおいては、提出書類の整備レベルが買い手からの信頼や評価を大きく左右します。

どれだけ正確かつ整理された資料を提示できるかによって、企業の「管理体制」や「透明性」が伝わり、最終的な条件交渉にも影響を及ぼします。

財務に関する書類

  • 決算書3~5期分(B/S・P/L・C/F)
  • 総勘定元帳、月次試算表
  • 借入金明細、在庫リスト

買い手の視点
利益の「質」を重視します。税務上の利益と実際の営業利益に乖離がある場合は、その理由を明示することで信頼性が高まります。

法務に関する書類

  • 定款、登記簿謄本、株主名簿
  • 各種契約書(売買契約・業務委託・リースなど)
  • 許認可証、独占禁止法関連資料

買い手の視点
契約の譲渡禁止条項や口約束の取引など、法的リスクが潜んでいないかを確認します。

税務に関する書類

  • 法人税・消費税申告書(3~5期分)
  • 税務調査記録、納税証明書
  • 繰越欠損金の明細

買い手の視点
過去の税務調査の有無、追徴リスク、税務処理の正確性を重視します。

人事・労務に関する書類

  • 就業規則、雇用契約書
  • 給与規程、給与明細、賞与制度
  • 社会保険加入状況、労働保険料申告書

買い手の視点
未払い残業や雇用契約の不備、待遇格差など人的リスクの有無を重点的に確認します。

事業・ビジネスに関する書類

  • 顧客名簿、主要取引先一覧
  • 売上構成比、仕入先リスト
  • 特許・商標など知的財産関連資料

買い手の視点
特定顧客への依存度やノウハウの保護状況を確認し、収益の再現性と成長性を評価します。

書類が揃っていないとどうなる?M&Aにおけるリスク

デューデリジェンスに必要な書類が十分に揃っていない場合、買い手側は企業の実態を正確に把握できず、取引全体の信頼性が低下します。特に中小企業のM&Aでは、書類の不備が「経営管理体制が甘い」「リスクの見通しが立たない」と判断され、企業価値の引き下げや交渉中止につながることもあります。

また、資料の提出が遅れると、スケジュールの遅延や買い手の熱意低下にも直結します。最悪の場合、重要な契約書や財務資料の欠落が発覚し、デューデリジェンスが完了せず交渉が白紙に戻るケースも少なくありません。

書類整備は、単なる形式的な作業ではなく、企業の信頼性を示す“見えない資産”です。資料が揃っている企業ほど、買い手から「管理が行き届いている」「リスクが少ない」と評価され、結果として成約率の向上や有利な条件提示につながります。

書類整備の3つのポイント|信頼される企業になるために

M&Aにおいて、書類整備は「企業の誠実さ」と「経営の見える化」を示す重要な要素です。
ここでは、デューデリジェンスを円滑に進め、買い手から信頼されるための3つの実践ポイントを紹介します。

優先順位をつけて段階的に整備する

M&Aでは、最初からすべての書類を完璧に揃える必要はありません。
まずは「決算書」「主要契約書」「登記・許認可関係」など、買い手の判断に直結する重要資料から整備を始めましょう。
その後、労務・税務・知的財産といった補足資料を追加していく流れが理想です。
「重要度の高いものから順に準備する」ことが、最も効率的で現実的な進め方です。

書式や内容の不備をコンサルタントと一緒に確認する

書類整備は専門的な判断を伴うため、独自に進めると抜け漏れや誤りが発生しがちです。
M&Aコンサルタントや税理士・弁護士など専門家のサポートを受けながら、「必要書類が網羅できているか」「形式が適切か」「更新が最新か」を定期的に確認しましょう。特に、契約書の有効期限や登記情報の相違など、細かな点でのミスは信頼を損ねる要因となります。

デジタル化とフォルダ整理で“見せ方”を整える

提出書類を紙のまま管理していると、検索や共有に時間がかかります。PDF化・クラウド保存・フォルダ分けなどのデジタル管理を行うことで、デューデリジェンス時に「資料提出が早く、整然としている」と高い評価を得やすくなります。ファイル名や分類ルールを統一しておくと、買い手が資料を確認しやすく、交渉全体のスピードアップにもつながります。

よくある質問(FAQ)

Q1.書類が一部しか揃っていなくてもM&Aは進められますか?
→ 書類がすべて揃っていなくても、交渉の初期段階であれば進行自体は可能です。
ただし、デューデリジェンスの過程で資料が不足すると、買い手の信頼を損ねたり、調査が停滞するおそれがあります。
そのため、決算書・主要契約書・登記関係などの重要書類から優先的に整備し、早期に開示できる状態をつくることが重要です。

Q2.どの書類から準備を始めるのが良いですか?
→ まずは「財務(決算書・借入明細)」と「法務(契約書・登記)」の2分野を優先しましょう。
これらは買い手が最初にチェックする部分であり、整備の遅れが交渉スピードに直結します。

Q3.契約書が口頭契約しかない場合はどうすればよいですか?
→ 取引内容をもとに、簡易な覚書や確認書を作成することをおすすめします。
特に主要取引先との口約束は、将来的な紛争リスクを回避するためにも、M&A前に書面化しておくのが望ましいです。

Q4.紙の書類が多く、整理が追いつきません。どう対応すべきですか?
→ 紙の資料はスキャンしてPDF化し、「財務」「契約」「労務」などカテゴリごとにフォルダ分けしましょう。
デジタル化によって検索性が高まり、買い手との共有もスムーズになります。アドバイザーによるチェック体制も整えやすくなります。

Q5.デューデリジェンスのための書類を外部に見せるのが不安です。
→ NDA(秘密保持契約)を締結したうえで開示するため、情報漏えいのリスクは最小限に抑えられます。
また、段階的開示(一次:概要資料、二次:詳細資料)を採用することで、リスクと効率を両立できます。

まとめ|デューデリジェンス書類の整備がM&A成功の第一歩

デューデリジェンスは、買い手が対象企業の実態を正しく理解し、リスクや価値を見極めるための重要なプロセスです。
この段階で提出する書類の精度と整備状況は、買い手の信頼・交渉スピード・最終条件を大きく左右します。

書類が不足していると、「経営管理体制が不透明」と見なされ、調査の遅延や条件引き下げにつながるリスクがあります。
一方で、必要な書類が整理され、整然と提示できる企業は、誠実さと信頼性の高さを評価され、M&A全体がスムーズに進行します。

事業承継や会社売却を検討している経営者は、今のうちから財務・契約・労務などの主要書類を整理し、段階的な整備を始めることが重要です。
また、書類の優先順位づけやフォーマットの統一には、M&Aアドバイザーや専門家のサポートを受けることで、作業の効率と精度を高められます。

たすきコンサルティングでは、デューデリジェンスに必要な書類の整備支援から、交渉・契約までを一貫してサポートしています。
初めてM&Aを検討される方でも安心して進められるよう、専門家が丁寧にサポートいたします。
事業承継を成功へ導く第一歩として、書類整備から始めてみましょう。


当社では、M&Aに精通した経験豊富なコンサルタントが在籍しております。                                             是非、コンサルタントとの無料相談をご活用ください。


株式会社たすきコンサルティング

お電話でのお問合せ 0120-007-888

一覧へ戻る