譲渡企業向けM&Aチェックリスト|成功するための準備には何が必要?

M&Aの成否は「譲渡前の準備」にかかっているといっても過言ではありません。事前に準備が不十分だと、価値の減少や交渉の行き詰まり、最悪の場合は「不成立」に至ることもあります。本記事では、中小企業庁の公式ガイドラインを基に、「譲渡企業のためのM&A準備チェックリスト」を実務的な視点でまとめました。ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aにおける「事前準備」が重要な理由
- 従業員の離職や取引先の解約を防ぐ
- 交渉を建設的かつ円滑に進めるため
- デューデリジェンスの通過率を高めるため
- 買い手からの信頼を得やすくなる
こうした事前準備は、単に情報を整えるだけでなく、M&A全体のスムーズな進行と成功率の向上に直結します。
例えば、従業員の雇用条件や役割を事前に明確にしておくことで、買い手は統合後の人員体制をイメージしやすくなり、不安や混乱を最小限に抑えることができます。また、財務・法務・許認可などの基礎資料が整っていれば、買い手によるデューデリジェンス(調査)のスピードが上がり、交渉や最終契約までの時間も短縮できます。
さらに、こうした整備を通じて、売り手企業の信頼性・誠実性が可視化され、買い手にとって安心材料となります。逆に、準備不足は後々の交渉で不利に働き、条件変更や取引破談といった事態にもつながりかねません。
そのため、M&Aに取り組むにあたっては、できる限り早い段階で準備に着手し、社内の現状把握や資料整理を進めておくことが極めて重要です。
【出典:中小M&Aガイドライン(中小企業庁)】
譲渡前に整理しておくべき主なポイント
① 後継者不在の確認と記録
社内外に後継者がいないことを明確にし、M&Aが最善策であるという判断の根拠を整理しておく。
② 希望条件や譲渡後の関わり方の整理
希望する譲渡価格や退任後の役割、報酬などを明確にし、交渉時のブレを防ぐ。
③ 金融機関や支援機関とのネットワーク構築
地元金融機関や公的M&A支援機関と早めに連携し、専門的サポートを受けやすくする。
④ 財務・税務資料の整理(3期分の決算書など)
買い手の企業価値評価に必要な財務情報を揃え、信頼性を高める。
⑤ 許認可・契約・登記情報の最新化
業種によって必要な許認可や契約書の整備、法人登記内容の正確性を確認し、リスクを減らす。
⑥ 株主構成と名義株の確認
株主の把握と名義株の解消を行い、スムーズな株式譲渡を可能にする。
⑦ 不動産や事業資産の名義と担保状況の確認
所有権や担保権の有無を整理し、資産価値や移転可能性を明確にする。
⑧ 従業員構成とキーマンの把握
経営に関わる主要人材を把握し、統合後の組織体制を見据えた情報提供に備える。
⑨ 情報管理体制の確立とNDAの準備
M&A交渉の過程での情報漏洩を防ぐため、秘密保持契約や社内ルールを整備する。
⑩ PMI(統合後の運営)を見据えた体制検討
M&A後の事業継続性を高めるため、統合方針や課題の整理を事前に検討しておく。
M&A成功のためのチェックリスト
【STEP1】事前準備・意思決定フェーズ
M&Aを検討し始めた初期段階で確認すべきこと
- ✅ 後継者が不在であることを確認・記録している
- ✅ M&Aの意思決定を経営者として固めている
- ✅ 譲渡価格や譲渡後の関わり方など希望条件を整理している
- ✅ 社内のキーマンや幹部社員を把握している
- ✅ 顧問税理士やM&A支援機関に初回相談を済ませている
【STEP2】情報整理・資料作成フェーズ
買い手候補に提示する情報を整える段階
- ✅ 決算書3期分・法人税申告書など財務資料を整理している
- ✅ 登記簿・契約書・許認可証など法務関係資料を整備している
- ✅ 株主構成・名義株の有無を確認し、整理している
- ✅ 所有資産・担保設定など資産状況を明確にしている
- ✅ 主力事業・売上構成・取引先情報を整理している
- ✅ 社内規程や労務関連資料を整備している
【STEP3】買い手探し・マッチングフェーズ
理想的な買い手と出会うための段階
※このステップの主業務(買い手探索・提案・交渉)は仲介会社が対応
- ✅ ただし、買い手候補への提案に備えて、誤記や古い情報がないか提出資料の最終確認を行う
- ✅ 一次面談に備えて自社の強み・弱みを整理し、代表者が応対できるよう準備する
【STEP4】基本合意・デューデリジェンスフェーズ
買い手が絞られ、本格交渉・調査が始まる段階
- ✅ 基本合意書の内容をしっかり確認している
- ✅ DD(デューデリジェンス)用の質問票に対応できる体制を整えている
- ✅ 提出資料を各部門と連携しながら整理している
- ✅ 潜在的な懸念事項を洗い出し、説明資料を用意している
- ✅ DD対応の履歴(質問・回答・提出書類)を一元管理している
【STEP5】最終契約・クロージングフェーズ
いよいよM&Aが成立する最終段階
- ✅ 最終契約書の内容(価格・条件・表明保証など)を十分に確認している
- ✅ 必要書類(印鑑証明、譲渡契約書など)を準備している
- ✅ 従業員や取引先への誠実な説明を行う準備をしている
- ✅ 株式や資産の譲渡、代金の受領などクロージング手続きを把握している
- ✅ PMI(統合後の運営)について買い手と協議・準備している
チェックリストを活用するメリットとは
- 現状の見える化と課題の発見につながる
- 交渉・契約・DDなど各ステップの円滑化
- 専門家や支援者への共有資料として活用可能
- 行政手続きや補助金申請時の書類にも対応
チェックリストは単なる確認ツールではなく、M&Aの準備状況を客観的に把握し、次に何をすべきかを明確にする「戦略的な計画表」として機能します。とくに初めてM&Aを検討する企業にとっては、見落としがちなリスクや論点を事前に洗い出せる貴重なツールです。
また、買い手企業や金融機関、専門家とのやり取りの場面において、準備状況を明示できる資料として提示することで、信頼性が向上し、交渉全体がスムーズに進みます。さらに、補助金の活用や公的支援を受ける際にも、行政が求める書式や要件に合致した内容を整理できるため、実務上の大きなアドバンテージとなります。
専門家と連携してM&Aを進めるべき理由
- 専門性の高いデューデリジェンスへの対応(例:財務は公認会計士、法務は弁護士)
- 中立的な立場からの価格交渉・スキーム設計
- PMIまでを視野に入れたアドバイス
- 補助金制度(例:事業承継・引継ぎ補助金)を利用しやすくなる
M&Aは多岐にわたる専門知識が求められる高度な取引です。売却を検討する企業にとって、すべてを自社だけで完結させるのは現実的ではありません。だからこそ、税理士、公認会計士、弁護士といった士業専門家や、M&Aに精通した仲介会社・アドバイザーの存在が不可欠です。
とくに中小企業の場合、内部にM&A経験者や専任担当者がいないことが多く、外部の専門家と連携することで、情報の整理、買い手探し、条件交渉、契約締結、クロージングまでを一貫してサポートしてもらえます。また、専門家が間に入ることで、感情的な対立を避けながら客観的な価格評価や譲渡スキームの検討が可能になります。
さらに、統合後の業務運営(PMI)や、国や自治体が用意している支援制度の申請においても、専門家の助言や書類作成支援があることで、スムーズかつ確実な進行が期待できます。こうした外部パートナーとの連携は、M&Aを単なる「売却取引」で終わらせず、「次世代への円滑な承継」として成功に導くための強力な推進力となるのです。
まとめ|M&A準備は「信頼構築」と「リスク回避」の第一歩
M&Aの成功には、買い手との信頼関係の構築と、リスクの見える化が不可欠です。そのためには、譲渡前の入念な準備が最重要事項です。今回ご紹介したチェックリストは、実務に落とし込める具体的な項目を整理したものです。専門家と連携しながら、着実に一歩ずつ準備を進めることが、円滑なM&Aの第一歩になります。
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