【業界記事】2025年最新│なぜ今、ITコンサル業界でM&Aが増えているのか?|事業承継に活用すべき理由と成功事例を解説

「DX化」「クラウド化」「AI導入」などが急速に進む中、ITコンサル業界におけるM&Aが加速しています。
特に中堅・中小のITコンサルティング会社では、経営者の高齢化や後継者不在の課題を背景に、事業承継の一環としてM&Aを選択するケースが増加。加えて、大手IT企業が人材獲得やソリューション拡充を目的に戦略的な買収を行う動きも目立ちます。
本記事では、ITコンサル業界が直面する課題や市場動向をふまえ、M&Aを活用した事業承継のポイントや、実際の成功事例をわかりやすく解説します。M&Aを通じて未来にバトンを渡したいと考える経営者の方々にとって、実践的な知識と判断材料となる内容をお届けします。
【記事提供:株式会社たすきコンサルティング】
中小企業の事業承継を支援するM&A仲介会社であり、約20年の財務コンサルティング実績を有する。公認会計士や税理士、中小企業診断士などの専門家が在籍し、全国規模で中小企業のM&Aをサポートしております。
※中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録済み
※一般社団法人「M&A支援機関協会」登録済み
目次
ITコンサル業界とは?
ITコンサル業界とは、企業の経営課題や業務改善をITの視点から支援するプロフェッショナルサービスを提供する業界です。業務プロセスの見直し、システム導入の計画策定、クラウド化やDX推進の支援など、多岐にわたる領域をカバーしています。
業界のプレイヤーは大手SIer系のコンサル部門から、ERPやCRM導入に特化した中堅企業、スタートアップや専門特化型のブティック型コンサル企業まで幅広く存在しています。特に近年では、中小企業のIT導入を支援するニーズの高まりにより、中堅・中小のITコンサル会社の存在感が増しています。
ITコンサル業界の課題と事業承継問題
ITコンサル業界は成長が見込まれる一方で、いくつかの構造的な課題と事業承継に関する問題を抱えています。特に中小規模のコンサル企業では、以下のような点が事業の継続や発展の大きな障壁となっています。
経営者の高齢化と後継者不在
中小企業庁の調査によれば、ITサービス・コンサルティング業界における経営者の高齢化が進んでおり、「後継者が未定」とする企業の割合は全業種平均を上回る傾向にあります。技術的なバックグラウンドや営業ネットワーク、信頼関係に依存するビジネスモデルゆえに、後継者の育成が困難な企業も多く見受けられます。
人材不足と採用難
IT人材の不足は深刻で、特にコンサルティングスキルを兼ね備えた人材は希少です。デジタル化が加速するなかで、優秀な人材の確保競争は激化しており、若手人材が大手や外資系に流れがちという傾向もあります。中堅企業ほど採用や育成のリソースが限られており、これが業務継続や成長の制約になっています。
技術進化とサービスモデルの変化
クラウド、AI、データ分析などの技術進化により、従来型のIT導入支援に加えて戦略的支援やアジャイル開発支援へのニーズが拡大しています。技術変化への対応力が求められる一方、古い技術に依存している企業では、競争力の低下や取引先からの見直しを受けることもあります。
このような背景から、近年では「M&Aによる第三者承継」を選択するITコンサル企業が増えつつあり、事業の継続性と成長性を両立する手段として注目されています。
ITコンサル業界のM&A動向
近年、ITコンサル業界ではM&Aの動きが活発化しています。特に以下の3つのトレンドが顕著です。
- デジタル領域強化を目的とした買収の増加
- 地域密着型コンサル企業への関心の高まり
- 事業承継型M&Aの増加
近年のITコンサル業界では、急速な技術革新と中小企業支援ニーズの高まりを背景に、M&Aが戦略的に活用されています。特にクラウド、DX、AIなどのデジタル領域での競争力を高めるため、大手IT企業は専門性を有する中堅・中小のITコンサル企業を積極的に買収しています。また、地方に根差した地域密着型のコンサル企業に対する関心も高まっており、大手による地域ネットワークの獲得を目的としたM&Aも進行中です。さらに、経営者の高齢化や後継者不在により、事業承継を目的としたM&Aも増加しており、企業の価値や文化を尊重した「スモールM&A」が注目されています。これらの動きは、業界の再編とともに、より多様で柔軟なM&A戦略が求められる時代の到来を示しています。
ITコンサル業界のM&A成功事例
■ トリオシステムズ株式会社による株式会社新適の買収(2025年)
トリオシステムズ株式会社は、システム開発・ITコンサルを手がける株式会社新適を買収しました。新適の代表はM&A後も経営に携わり、両社はIPOを視野に入れた協業体制を構築しています。このM&Aは、トリオ社による成長戦略の一環であり、技術力と人材の強化を目的としています。
【出典元:PR TIMES|トリオシステムズ×新適のM&A事例】
■ 株式会社ビジネスブレイン太田昭和による株式会社トゥインクルの株式取得(2023年)
BBSはITインフラ事業やBPOサービス事業を行う株式会社トゥインクルの全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。このM&Aにより、BBSはシステム構築・運用事業のサービス体制や、コールセンター業務などの強化を図り、バックオフィスの課題解決により深く貢献できる体制を整えています。
【出典元:株式会社ビジネスブレイン太田昭和 ニュースリリース】
■ 株式会社ビジネスブレイン太田昭和による株式会社フレスコの株式取得(2023年)
BBSは製造業向けのCAD/PDMシステム開発に強みを持つ株式会社フレスコの株式を85%取得し、子会社化しました。このM&Aにより、BBSは製造業のバックオフィス支援を拡充し、CADシステムの開発力を取り入れることで、製造業のDX推進を加速させる体制を整えています。
【出典元:株式会社ビジネスブレイン太田昭和 ニュースリリース】
■ 株式会社NTTデータによるEverisの買収(2013年)
NTTデータはスペインのITコンサルティング企業Everisを買収しました。Everisは、スペインや中南米6カ国において大手銀行、大手保険会社、大手通信事業者、政府機関等を主要顧客としており、スペイン語やポルトガル語に対応した情報システム構築に強みを持っています。この買収により、NTTデータは欧州や中南米での事業基盤を強化し、グローバルな展開を加速させました。
【出典元:NTTデータ プレスリリース】
ITコンサル業界におけるM&Aのメリット
■ M&Aのメリット
- 高度な人材・ノウハウの獲得
- 顧客基盤・商流の拡大
- サービス領域の拡張
M&Aは、ITコンサル企業が競争力を高めるうえで非常に有効な手段です。第一に、高度な専門スキルや業界知識を持つ人材やチームを一括して獲得できるため、即戦力となる人材不足の解消につながります。第二に、M&Aによって新たな顧客層や業界特化の取引先との関係を取り込めるため、営業展開やサービス提案の幅が広がります。特に地域密着型企業との統合では、地場での信頼関係をそのまま承継できる点も大きな魅力です。
さらに、クラウド、ERP、AIなど異なる強みを持つ企業同士が連携することで、ワンストップで包括的なITコンサルサービスを提供できる体制が整い、他社との差別化を実現することが可能になります。
■ M&Aに伴うリスクと対策
- 組織文化の不一致による統合の難しさ
- キーマン離職による事業失速リスク
- サービスモデルの統合困難
ITコンサル業界でのM&Aには多くのメリットがある一方で、いくつかのリスクも伴います。
まず、組織文化の違いによって統合がスムーズに進まないことがあります。企業ごとに働き方や評価制度が異なるため、統合後に価値観の不一致が表面化することも少なくありません。こうした事態を防ぐには、M&A前から経営層同士での対話や文化のすり合わせを行い、相互理解を深めることが重要です。
次に、キーマンとなる従業員の離職による事業の停滞リスクがあります。特に顧客との信頼関係を築いている人材の離脱は、売却後の業績悪化につながりかねません。このリスクを回避するには、M&A後のインセンティブ制度やキャリアプランを明示し、従業員のモチベーション維持に努める必要があります。
また、サービスモデルや報酬体系の違いから、収益構造の統合に失敗するケースもあります。これに対しては、事前に業務内容とビジネスモデルを十分に分析し、段階的に統合を進めることで現場の混乱を最小限に抑えることが効果的です。
ITコンサル業界において事業承継を成功させるためのM&Aのポイント
ITコンサル業界では、経営者の高齢化や人材確保の難しさから、M&Aを活用した事業承継の重要性がますます高まっています。ここでは、M&Aを成功に導くために押さえておきたい4つの実務的なポイントをご紹介します。

1.ノウハウ・人材の可視化と継承計画の策定
ITコンサル企業の価値は「人」と「ノウハウ」にあります。属人的な営業・プロジェクト管理・技術知見などは、買収側にとって見えにくい資産です。そのため、早い段階でドキュメント整備や引き継ぎマニュアルの作成を行い、承継準備を進めることが重要です。
2.キーパーソンとの合意形成とインセンティブ設計
現場のマネージャーやプロジェクトリーダーといったキーパーソンの流出は、買収後の混乱につながります。M&Aにあたっては、彼らとの事前面談や条件提示を行い、ポストM&Aでの役割や報酬制度を明確化しておくことが、成功確率を高めます。
3.既存顧客との契約関係の整理と維持戦略
ITコンサル業では、継続契約や紹介による受注が多いため、顧客との信頼関係が資産そのものです。M&Aに際しては、主要顧客との契約条件、継続意思、依存度を把握し、買収後もスムーズに業務を引き継げる体制を整えておくことが不可欠です。
4.専門家との連携による客観的な企業価値の把握
ITコンサル企業は、財務数値だけでなく将来性や人的資産が重要な評価軸となるため、M&A仲介会社や会計士、M&Aアドバイザーといった専門家の力を借りて、適正な企業価値を把握することがスムーズな承継につながります。
ITコンサル業界の今後の展望
ITコンサル業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速とともに、今後も高い成長が見込まれています。特に以下の3つの視点から、業界の展望を整理します。
DX・クラウド需要の拡大で中小企業のIT化支援が本格化
政府の「中小企業デジタル化応援隊」や補助金制度の活用が進む中、従来IT投資に消極的だった中小企業でも、業務改善やIT導入のニーズが急速に高まっています。これにより、ITコンサル企業が担う役割は、単なるシステム選定支援から、企業全体の業務構造改革支援へとシフトしつつあります。
【出典元:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」】
技術領域の広がりと高度化に対応できる専門コンサルの重要性
AI、データ分析、セキュリティ、ゼロトラスト、ローコード/ノーコードなどの新技術を扱えるITコンサル企業へのニーズが増しています。顧客も“総合支援”から“領域特化型”の専門性を重視する傾向にあり、ニッチな分野に強い中小コンサル企業が台頭する機会も広がっています。
【出典元:中小企業庁「第2節 中小企業のデジタル化推進に向けた取組」】
M&Aによる競争再編がさらに加速
大手SIerやITサービス企業は、M&Aを通じてコンサルティング領域を強化する動きを強めています。特に「業務×IT」のケイパビリティを持つ中堅コンサル会社への関心は高く、買収による市場再編が今後も進行する見通しです。また、後継者不在の中小ITコンサル企業のM&A案件も増加傾向にあり、業界全体で「選ばれる売却」への備えが必要です。
【出典元:中小企業庁「第2節 中小企業のデジタル化推進に向けた取組」】
まとめ│事業承継×ITコンサル
ITコンサル業界は、DXやクラウド移行、データ利活用のニーズ拡大により市場成長が続く一方で、経営者の高齢化や人材不足といった構造的課題も抱えています。中でも、事業承継は業界全体にとって喫緊のテーマであり、M&Aを活用したスムーズなバトンタッチが、企業の継続的な成長と市場の健全な再編を実現する鍵となります。
近年は、後継者不在の中堅・中小のITコンサル企業が、大手の買収や同業との統合を通じて新たな成長軌道に乗るケースも増えており、「M&A=出口戦略」ではなく、「次の成長を支える手段」としての捉え方が浸透しつつあります。
事業承継を見据えたM&Aの実施には、専門家による企業価値評価やPMI(統合計画)の立案、従業員・取引先への丁寧な説明などが不可欠です。時代の変化をチャンスに変え、より多くのITコンサル企業がM&Aを通じてその価値を未来につないでいくことが期待されます。
担当コンサルタント紹介
たすきコンサルティングでは、IT業界に精通した専門コンサルタントが、貴社のニーズに合わせた最適な事業承継支援を提供しております。後継者選定から経営資源の引継ぎまで、専門的なサポートで貴社をバックアップいたします。

業界特化法人部 シニアコンサルタント
古川 龍也
京都大学大学院卒、メガバンクに入行し、法人融資・企業調査業務に従事。グループ証券会社に出向し、M&A業務を経験。2021年1月にたすきコンサルティングに入社し、多数の会社を成約に導く。
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