M&Aにおける必要書類「デューデリジェンスに必要な書類」とは?事業承継を成功させるための書類整備について解説
M&Aにおける「デューデリジェンス(DD)」とは、買い手側が売り手企業の実態を調査し、価格や取引の判断に役立てるために必要な重要なプロセスです。
この時に提出される書類の内容が、M&Aの進行スピードや成約条件に大きく影響します。
特に中小企業の事業承継においては、「どこまで書類を揃えられているか」が信頼性の判断材料となります。
本記事では、事業承継を検討する経営者に向けて、デューデリジェンスで必要となる書類とその準備ポイントを、実務の視点から分かりやすく解説します。

目次
M&Aにおけるデューデリジェンスとは?
デューデリジェンス(DD)とは、買い手企業が売り手企業の経営実態を正確に把握し、リスクを確認するために行う「企業精査」です。基本合意書の締結後に行われることが一般的で、調査結果によっては、譲渡価格や契約内容が見直されることもあります。
デューデリジェンスに必要な書類とは?
M&Aにおけるデューデリジェンスでは、以下の5つの領域ごとに資料の提出が求められます。
分類 | 内容の例 | 見られる視点 |
財務 | 決算書・試算表・借入明細など | 利益の継続性、資産の実態、隠れ債務の有無 |
法務 | 定款・契約書・登記簿など | 所有権・契約リスク、訴訟や法令違反リスク |
税務 | 申告書・税務調査記録など | 適正納税、未払税金、繰越欠損金の有無 |
労務 | 雇用契約・就業規則・社会保険 | 雇用安定性、人件費水準、未払いリスク |
事業 | 顧客リスト・売上構成・知財資料 | 収益構造、取引継続性、競争優位性 |
デューデリジェンスに必要な書類別の詳細と注意点
M&Aにおけるデューデリジェンスに必要な書類をそれぞれ解説します。

- 財務に関する書類
- 決算書3~5期分(B/S・P/L・C/F)
- 総勘定元帳、月次試算表
- 借入金明細、在庫リスト
買い手の視点: 利益の“質”を重視。税務上の利益と実質的な営業利益の乖離がある場合は、その理由を明確に示しましょう。
- 法務に関する書類
- 定款、登記簿謄本、株主名簿
- 各種契約書(売買・業務・リース等)
- 許認可証・独占禁止法に関する書類
買い手の視点: 契約の譲渡禁止条項や、重要契約が口約束に留まっていないか、がチェックポイントです。
- 税務に関する書類
- 法人税・消費税の申告書(3~5期)
- 税務調査の記録や指摘事項
- 納税証明書、繰越欠損金の明細
買い手の視点: 税務調査の履歴や追徴リスク、税制適用の正確性を重視します。
- 人事・労務に関する書類
- 就業規則・雇用契約書
- 給与明細、給与規程、賞与制度
- 社会保険加入状況、労働保険料申告書
買い手の視点: 従業員の雇用環境や未払い残業代、待遇格差の有無が見られます。
- ビジネス・事業運営に関する書類
- 顧客名簿、売上高上位10社の構成比
- 仕入先、販売チャネルの一覧
- 特許・商標・ブランド関連書類
買い手の視点: 売上依存先の偏りや、特許・ノウハウの法的保護状況を重要視します。
書類が揃っていないとどうなるか?
- 「経営管理に不安がある」と判断され、買い手からの評価が低下
- リスクが見えないため、価格交渉で大きく値引きされる可能性
- DDが完了せず、交渉が中断・白紙になることも
書類提出は、“価格交渉の武器”であり、“信頼の証”でもあります。必要な書類を整備し、正確かつ誠実に開示できる企業は、買い手から高く評価され、成約スピードも格段に上がります。
書類整備に取り組む上でのポイント
✅ 最初から完璧である必要はありません。優先順位をつけて段階的に準備しましょう。
✅ 書類の提出漏れ・形式違いがある場合は、早めにアドバイザーへ相談しましょう。
✅ デジタルでの保存(PDF化)とカテゴリ分けをしておくと、買い手も確認しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 書類が揃っていない場合、M&Aはできない?
→ 揃っていなくても開始は可能ですが、進行途中での資料不足は信用を失う原因になります。
Q. 契約書が紙ベースしかないのですが?
→ スキャンしてPDF化し、カテゴリごとにフォルダ分けしておきましょう。
Q. 雇用契約が口約束です。
→ 書面化が望ましいです。アドバイザーや社労士の協力を得て整備を進めましょう。
まとめ|事業承継を成功させるための「書類整備」
M&Aによる事業承継では、「企業価値そのもの」だけでなく、「その企業がどれだけ管理されているか」という経営の透明性・信頼性が大きく評価されます。
そしてそれを買い手に伝える最大の手段が、デューデリジェンスに関する書類の整備です。
事業承継の現場では、「売上は好調なのに書類が整理されていない」という理由だけで、交渉が難航したり、価格が大きく下がることも珍しくありません。逆に言えば、必要な書類を整備し、正確かつ誠実に開示できる企業は、買い手から高く評価され、成約スピードも格段に上がります。
実務負担を減らし、より戦略的に売却交渉に臨むためにも、信頼できる専門家とともに進めることをおすすめします。

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