M&Aにおける「ノンネームシート」とは?作成目的・書き方・注意点を徹底解説

【2025年10月更新】

M&Aを進めるうえで、最初に作成される重要な書類が「ノンネームシート(匿名概要書)」です。
ノンネームシートは、譲渡企業(売り手企業)の社名を伏せたまま、事業内容や強みを買い手候補(譲受企業)に伝える資料であり、M&A成功の第一歩となる非常に重要なドキュメントです。

この資料は、買い手が「興味があるかどうか」を判断する最初の接点となるため、内容次第でその後の交渉スピードや成約率が大きく変わります。
一方で、「情報を開示しすぎて企業が特定されてしまう」「逆に情報を出さなすぎて関心を得られない」といったケースも少なくありません。

本記事では、ノンネームシートの目的や作成のポイント、注意すべきリスクと対策をわかりやすく解説します。M&Aを検討中の経営者や実務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

ノンネームシートとは?

ノンネームシートとは、M&A取引において譲渡企業(売り手企業)が匿名で企業情報を開示するための初期資料です。
企業名・所在地・代表者名など特定可能な情報を伏せつつ、事業内容・財務概要・強み・譲渡理由などを簡潔にまとめます。

買い手はこの資料をもとに「興味があるか」を判断し、関心を示した場合に次のステップとしてネームクリア(社名開示)が行われます。

ノンネームシートの目的と重要性

匿名性を保ちながら企業の魅力を伝える

M&Aを検討していることが外部に漏れると、従業員や取引先に不安が広がるおそれがあります。ノンネームシートは、企業名を伏せたまま安全に情報を共有できる仕組みで、「守秘性」と「訴求力」のバランスが重要です。

買い手候補の選別を効率化

資料を見た買い手が「興味あり」と判断した場合のみ次に進めるため、有望な買い手候補を効率的に絞り込むフィルターとして機能します。

③ M&A全体の成否を左右する第一印象

ノンネームシートの内容次第で、「この企業に会ってみたい」と思わせるかどうかが決まります。情報の整理・表現の工夫が、最終的な成約率にも影響する重要書類です。

ノンネームシートの主な記載項目と作成ポイント

ノンネームシートには、譲渡企業(売り手企業)の基本情報を匿名のまま買い手候補(譲受企業)に伝えるための必要最低限の情報を記載します。
ポイントは、「企業を特定されない範囲で、魅力を十分に伝えること」。
情報を少なすぎず・出しすぎず整理することで、買い手にとって“検討したい”と思わせるバランスが重要です。

以下は、ノンネームシートでよく用いられる主な項目と作成時の注意点です。

項目記載のポイント記載例
業種・事業概要匿名を保ちながら事業の特徴を伝える特殊部品を製造し、国内トップクラスのシェアを保有
売上規模・利益金額は幅で表現(5〜10億円など)売上:5〜10億円、営業利益:約8%
事業の強み買い手に訴求できる独自性を記載自社開発の特許技術を有する
譲渡理由前向きに、簡潔に表現後継者不在による第三者承継を検討中
希望スキーム株式譲渡・事業譲渡などを明記株式譲渡を希望(100%譲渡)
従業員数・拠点特定されないように地域・人数をぼかす関東地方に本社、社員10名程度

ノンネームシートの作り方|成功するための3ステップ

ステップ①:企業情報を整理する

財務・人員・事業構成など、開示可能な範囲を洗い出します。
「強み」「譲渡理由」「希望条件」を一貫性をもってまとめることが重要です。

ステップ②:匿名性を確保する

企業名・住所・代表者名・主要取引先などは削除またはぼかします。
特定されない表現(例:「関東地方」「創業30年以上」など)を徹底します。

ステップ③:買い手視点で魅力を整理する

買い手が求めるのは「収益性」「成長性」「シナジー効果」です。
単なる事実羅列ではなく、「どんな強みがあるのか」「どんな可能性があるのか」を意識して構成しましょう。

ノンネームシート作成時の注意点(失敗しない5つの対策)

ノンネームシートの作成時には、情報の出し方を誤ると企業特定や情報漏洩につながるリスクがあります。
以下では、失敗しないノンネームシートの作り方・注意点を5つのポイントで解説します。

特定につながる情報を記載しない

地域・業種・売上高の組み合わせによって企業が特定されるケースが少なくありません。そのため、表現をぼかしながらも、事業の特徴が伝わるように工夫することが大切です。

売却(譲渡)理由は前向きな表現で

「業績悪化」「撤退」といったネガティブな表現は避け、「経営資源の選択と集中」や「後継者不在による事業承継」など、前向きな理由として記載しましょう。
買い手に安心感を与えることが、次のステップにつながります。

情報を開示しすぎない

ノンネームシートはあくまで「興味喚起」のための資料です。
詳細な財務データや主要取引先名などは、IM(企業概要書)やデューデリジェンスの段階で開示するのが適切です。

秘密保持契約(NDA)締結後に情報を開示する

ノンネームシートの配布は、NDA(秘密保持契約)を締結した後に行うのが原則です。
また、第三者への転送禁止の明記やPDFへの閲覧制限設定など、情報漏洩を防ぐための基本的な対策も忘れずに行いましょう。

情報は段階的に開示する

M&Aの情報開示は、「ノンネーム → ネームクリア → IM(詳細資料) → トップ面談」という流れで進めます。
初期段階では企業の特定を避けつつ、興味を持ってもらうことに重点を置き、買い手の関心度を確認しながら段階的に情報を開示していくことが重要です。

ネームクリアとは?ノンネームシートの次に行う“企業名開示”のプロセス

「ネームクリア(Name Clear)」とは、M&Aの初期段階で譲渡企業(売り手企業)の実名や詳細情報を、買い手候補(譲受企業)に初めて開示する手続きを指します。
ノンネームシートでは匿名の状態で概要を伝えますが、ネームクリアによって初めて企業名・所在地・代表者情報などを正式に開示し、交渉が本格的にスタートします。

この段階は、M&Aにおける信頼関係構築の入り口であり、情報開示のバランスが非常に重要です。開示する前には、必ず秘密保持契約(NDA)を締結し、相手企業の信頼性や目的を慎重に確認することが求められます。

ネームクリアの基本的な流れ

① ノンネームシートの提示
 匿名の概要資料を提示し、買い手候補の関心を確認

② 買い手の意向確認(関心表明)
 興味を示した企業に対して選定・対応を進める

③ 秘密保持契約(NDA)の締結
 情報管理と守秘義務のルールを明確化

④  ネームクリアの実施
 社名・所在地・代表者・財務情報などを正式開示

⑤ IM(企業概要書)提供・トップ面談へ
 詳細な資料を共有し、条件交渉や面談へと進行

ネームクリア時の注意点

ネームクリアは、M&A交渉を前進させる重要なステップである一方、情報漏洩リスクが最も高い局面でもあります。
安全に進めるために、次のポイントを意識しましょう。

  • 開示対象を慎重に選定:関心度・信頼性の高い買い手候補に限定して実施
  • NDA締結後の開示を徹底:契約前の企業名開示は厳禁
  • 資料の管理体制を強化:転送防止・アクセス制限・パスワード設定を行う

適切な手順を踏むことで、譲渡企業の機密を守りながら、信頼できる買い手との良好な関係を築くことができます。

まとめ│ノンネームシートとネームクリアを正しく理解し、M&A成功につなげる

ノンネームシートとネームクリアは、M&Aの初期段階で最も重要な2つのプロセスです。
ノンネームシートでは、匿名性を保ちつつ譲渡企業の魅力を伝え、買い手の関心を惹きつけることが目的です。
一方でネームクリアでは、秘密保持契約(NDA)のもとで詳細情報を開示し、信頼関係を築きながら本格的な交渉に進みます。

これらの手続きを正しく理解・実践することで、

  • 機密情報の流出を防ぎながら、
  • 本気度の高い買い手を効率的に選定し、
  • より良い条件でのM&A成約を実現できます。

ノンネームシートの内容とネームクリアの進め方は、M&A全体の成功を左右するカギです。
情報開示の「バランス」と「タイミング」を見極めながら、専門家のサポートのもとで戦略的に進めることが、成功への最短ルートとなります。


当社では、M&Aに精通した経験豊富なコンサルタントが在籍しております。                                             是非、コンサルタントとの無料相談をご活用ください。


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