休眠会社とは?手続き・メリット・デメリット・再開方法まで徹底解説

【2025年10月更新】
「休眠会社」とは、事業を一時的に停止しつつも法人格を維持している会社のことです。
経営環境の変化や後継者不在などにより、事業を続けるのが難しい場合でも、会社を完全に解散・廃業せずに休眠状態にすることで、将来の事業再開やM&Aによる譲渡の可能性を残すことができます。
一方で、休眠会社には税務上の手続きや維持コスト、みなし解散のリスクもあるため、仕組みを正しく理解することが重要です。
この記事では、「休眠会社とは何か」から、「手続きの流れ」「メリット・デメリット」「再開・解散方法」までをわかりやすく解説します。
目次
休眠会社とは?
休眠会社とは、事業活動を停止しているものの、法人登記が存続している会社を指します。
一時的に経営を止めても、解散登記を行わずに法人格を維持することで、会社としての「名義」「資産」「契約関係」などを残すことが可能です。
日本の会社法上に「休眠会社」という明確な法律用語は存在しませんが、会社法第472条では、最終登記から12年を経過した株式会社について、法務大臣が官報で公告を行い、2か月以内に「事業継続の届出」がなければ、会社を解散したものとみなすと定められています。
この場合、登記官が職権で「解散登記」を行うこととなり、法人格は失われます。
ただし、特例有限会社など一部の会社形態はこの制度の対象外である点にも注意が必要です。
みなし解散・廃業との違い
みなし解散 とは
法務局が「12年間登記がない株式会社」に対して、自動的に解散を公告する制度です。
通知を受けてから2か月以内に異議申し立てを行わない場合、自動的に解散扱いとなり、法人格が消滅します。
廃業(清算) とは
株主総会で正式に解散を決議し、資産や負債を清算したうえで法人格を消滅させる手続きです。
登記・税務・清算人選任などの法的手続きが必要になります。
休眠会社の目的とメリット
将来的な事業再開に備えられる
会社を休眠状態にしておくことで、事業環境が好転した際にすぐに再スタートを切ることができます。
新たに会社を設立するための定款作成や登記費用が不要なため、コストを抑えながらスピーディに事業を再開できるのが大きなメリットです。
経営環境の変化を見極める猶予を確保できる
市場や業界の動向を冷静に観察し、再出発の最適なタイミングを見極めることが可能です。
急いで撤退・解散するのではなく、経営判断の幅を広げる「一時停止」という柔軟な選択が取れます。
後継者不在時の一時的な対応策として有効
経営者の高齢化や後継者不足により、事業承継の見通しが立たない場合でも、法人を休眠させておくことで会社を残すことができます。
これにより、後継者が見つかった際や、第三者へのM&Aによる承継が実現した際にもスムーズに事業を引き継ぐことが可能になります。
ブランドや資産を維持できる
休眠状態であっても、法人名や商号、商標権、不動産などの資産をそのまま保持できます。
これにより、事業再開時にブランドや知的財産を再取得する手間とコストを省き、これまで築いた信用や価値を活かすことができます。
休眠会社の手続き方法(法務局・税務署)
会社を休眠状態にする際は、まず税務署への「異動届出書」の提出が基本です。
法務局への「休眠届」は義務ではありませんが、意思を明確にしておくために任意で行うケースもあります。
1.法務局での手続き(登記関連)
会社を休眠状態にする際、法務局への「休眠届」提出は義務ではありません。
ただし、休眠の意思を明確にしておきたい場合は、任意で提出することができます。
また、役員変更や本店移転など、登記事項に変更がある場合は別途登記申請が必要です。
手続きのポイント
- 商号(会社名)・本店所在地・役員構成に変更がなければ手続き不要
- 登記事項に変更がある場合 → 変更登記が必要
- 最後の登記から 12年間 登記を行っていない場合、「みなし解散」の対象に
2.税務署での手続き(異動届出)
事業を休止する場合は、税務署に「異動届出書」を提出します。
この届出により、法人税や消費税などの取り扱いが変更されます。
主な提出先と書類
- 提出先:会社所在地を管轄する税務署
- 提出書類:「異動届出書」
- 提出時期:休眠を決定してからおおむね1か月以内
税務上のポイント
- 休眠中は原則として 法人税・消費税の申告が不要(収益がない場合)
- ただし、法人住民税(均等割)は毎年発生
- 休眠状態から事業を再開する場合 → 再度「異動届出書」を提出し、課税対象に復帰
3.自治体への届出(法人住民税)
法人住民税の納税先である都道府県税事務所や市区町村役場にも届出が必要です。
税務署と同様に「異動届出書」を提出し、法人住民税の課税区分を変更します。
提出先は地域によって異なるため、
「○○県 税務課」「○○市 法人住民税 異動届」などで検索し、正しい提出先を確認しておくと安心です。
4.休眠中も必要な管理
休眠状態であっても、以下の対応は継続して行う必要があります。
- 決算期には「休業中」として決算書を作成
- 法人住民税(均等割)の納付
- 役員変更や本店移転など登記事項の変更があった場合は登記申請
これらを怠ると「みなし解散」や信用低下につながる可能性があります。会社を維持するためにも、最低限の管理は欠かさないようにしましょう。
休眠会社のデメリット・注意点
休眠会社は柔軟な経営手段である一方、維持コストや税務・登記の管理リスクといったデメリットも存在します。放置すると「みなし解散」や信用低下につながるおそれがあるため、適切な管理が必要です。
法人住民税(均等割)の負担が続く
休眠状態でも、会社として登記が残っている限り、
毎年法人住民税(均等割)の支払い義務が発生します。
- 売上や利益がなくても、法人格を維持する限り課税される
- 年間7万円前後(自治体によって異なる)の固定費が発生
- 資金繰りが厳しい場合は、負担となることも
⇒ 事業再開までに時間がかかる場合は、解散・清算を検討することも選択肢です。
12年間登記をしないと「みなし解散」になる
会社法第472条に基づき、最後の登記から12年が経過すると、法務局が「みなし解散公告」を行います。
公告後2か月以内に届出を行わないと、自動的に「解散」とみなされ、法人格が失われます。
- みなし解散後は、資産が国に帰属する可能性も
- 事業再開する場合は、「会社継続の登記」が必要
⇒ 登記を怠ると、知らないうちに会社が消滅してしまうリスクがあります。
会社の信用が低下するリスク
長期間休眠状態が続くと、取引先や金融機関から「経営不振」「実質的な廃業」とみなされるおそれがあります。
- 融資・リース契約の審査が通りにくくなる
- 取引契約を解除される可能性がある
- 事業再開時に信用回復まで時間がかかる
⇒ 信用を維持するためには、定期的な情報更新や登記・報告を怠らないことが重要です。
事業再開時にコストと手間がかかる
休眠状態を解除して再開する際には、登記・税務・社会保険などの手続きを再度行う必要があります。
- 変更登記や異動届出の提出
- 税務署・自治体・年金事務所への再登録
- 社会保険・雇用保険の再加入
⇒ 再開までの準備期間を考慮し、スケジュールを立てておくとスムーズです。
維持コストが発生し続ける
休眠会社でも、法人を維持するためのコストは一定程度発生します。
- 税理士報酬や会計処理費用
- 登記・書類保管・契約維持費
- 銀行口座やドメインなどの名義維持費
⇒ 長期的に事業を再開する予定がない場合は、維持コストとのバランスを検討しましょう。
休眠会社の活用方法
休眠会社は、単に事業を止めるための制度ではなく、将来的な経営戦略や事業承継に活かせる「経営資源の保全手段」としても注目されています。
法人格を維持しながら柔軟に活用することで、再チャレンジや資産の有効活用が可能になります。
将来的な事業再開に備える
最も一般的な活用方法は、事業環境が整うまで会社を一時的に休止し、再開を待つというものです。
法人格を維持しておけば、再開時に新設登記を行う必要がなく、短期間で事業を再始動できます。
メリット
- 新会社設立費用(定款認証・登記費用など)を節約できる
- 取引先・銀行口座・契約をそのまま活用できる
- 法人格・社名・ブランドを保持したまま再スタート可能
M&A・事業承継のための「法人格の維持」
休眠会社は、M&Aや事業承継の土台として活用することも可能です。
後継者が決まっていない場合でも、法人格を残しておくことで、第三者への譲渡や承継が容易になります。
活用例
- 後継者が見つかるまで法人格を維持し、M&Aで事業を譲渡
- 休眠中の会社を譲渡し、買い手が新規事業のベースとして利用
- 不動産・特許・商標などを法人名義で保持し、承継時にスムーズに移転
⇒ 「事業を終わらせず、未来の引き継ぎ先に託す」選択肢として有効です。
ブランド・商号の保護
休眠会社を維持することで、商号・ブランド名を保護する効果もあります。
解散してしまうと社名が他社に使用される可能性がありますが、法人格を残しておけばそのリスクを回避できます。
メリット
- 商号・商標を維持し、第三者による使用を防止
- 将来の事業再開時に、同じブランドで復帰可能
- 既存顧客や市場からの認知を維持
⇒ 特にブランド価値の高い企業や老舗企業では、休眠によるブランド保全が有効です。
資産管理会社として活用
事業を行わない期間中でも、法人格を維持しておくことで、不動産・株式・特許などの資産管理会社として活用することができます。
具体的な活用例
- 事業撤退後に保有していた不動産を法人名義で管理
- 投資・資産運用・ライセンス管理を法人として実施
- 個人では扱いにくい資産を法人格を通じて運用
⇒ 税務面での管理一元化や、相続・事業承継時のスムーズな引き継ぎにも役立ちます。
法人実績を活かした新規事業展開
過去に登記・決算実績がある法人は、新設法人よりも社会的信用度が高く、融資・契約・取引の面で有利に働くことがあります。
メリット
- 金融機関や取引先からの信頼を得やすい
- 新規事業開始時に法人実績を活用できる
- 許認可の取得がスムーズになる場合も
⇒ 「実績のある法人をベースに新事業を展開する」ことで、時間と信用を節約できます。
まとめ│休眠会社を正しく活用し、経営の選択肢を広げる
休眠会社は、「撤退」ではなく「次の経営戦略に備える準備期間」としても活用できる仕組みです。事業の一時停止や経営の立て直しだけでなく、将来の再出発や事業承継、M&Aなど、次の経営ステージへ備えるための有効な手段です。
解散・清算とは異なり、法人格を維持することで「会社を守りながら次の一手を考える」ことができます。
ただし、休眠中も法人住民税の負担や登記義務が残るほか、長期間放置すると「みなし解散」や信用低下などのリスクもあります。
そのため、「どの期間・どの目的で休眠させるのか」を明確にし、必要な届出・管理を怠らないことが重要です。
一方で、適切に管理された休眠会社は、
- 事業再開のスムーズ化
- M&A・事業承継の下地づくり
- ブランド・資産の維持
など、経営戦略の幅を大きく広げることができます。
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