
電子部品・半導体業界で、M&Aによる譲渡・売却・事業承継の案件が増えています。その背景には、後継者不在や設備投資の限界といった経営上の課題だけでなく、AIの急速な普及や地政学リスクを受けた業界構造そのものの変化があります。
この記事では、電子部品・半導体業界の現状と将来展望を踏まえながら、M&Aという選択肢を検討するにあたって知っておくべき業界動向・国の政策の方向性・M&Aが増えている背景・売却価値の考え方・実際の事例を、中小企業経営者の目線で整理しています。
「今すぐ売りたい」というより、「選択肢として正しく理解したい」という段階の方にこそ、読んでいただきたい内容です。
【記事提供:株式会社たすきコンサルティング】
株式会社たすきコンサルティングは、中小企業の事業承継・M&Aを専門に支援するM&A仲介会社です。約20年にわたる財務コンサルティングを基盤に、公認会計士・税理士などの専門家と連携しながら、全国の中小企業を対象にM&Aの検討から成約までをサポートしています。
中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録し、一般社団法人「M&A支援機関協会」にも加盟しています。
※中小M&Aガイドライン(第3版)遵守の宣言について
目 次
電子部品・半導体業界とは?—— 今、経営者に問われている選択とは
電子部品・半導体業界は、スマートフォン・自動車・産業機器・医療機器など、あらゆる製品の「頭脳」と「神経」を支える産業です。半導体はデータの処理・演算を担い、抵抗・コンデンサ・センサー・コネクタといった電子部品はその周辺回路を構成します。最終製品の完成度は、こうした部品・素材の品質と供給安定性に大きく左右されます。
市場規模という点でも、この業界の存在感は際立っています。
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が2025年12月に発表した「電子情報産業の世界生産見通し」によると、半導体・電子部品を含む電子情報産業全体の世界生産額は、2024年に前年比9%増の3兆7,250億ドルに達しました。2025年はさらに11%増の4兆1,184億ドルと史上初の4兆ドル超えが見込まれており、2026年も10%増の4兆5,103億ドルと過去最高の更新が続く見通しです。AIを起点としたデータセンター需要の急拡大と、自動車・産業機器のデジタル化が、この成長を下支えしています。

【出典:JEITA「電子情報産業の世界生産見通し」2025年12月発表】より作成
国内に目を向けると、電子部品・半導体を含む電子工業の国内生産額は2024年に11兆3,220億円(前年比+6%)となり、2023年から2026年にかけて10兆円規模を超える水準が続く見通しです。自動車向けやAIサーバ向けの需要が全体を下支えしています。
その一方で、日本の存在感は相対的に低下しています。かつて世界シェアの50%を誇った日本の半導体産業は、現在10%未満にまで落ち込んでいます。この構造変化の背景と国の対応策については、次のセクションで詳しく触れます。
市場は拡大している。しかし日本の存在感は低下している。この二つの事実が同時に進行しているのが、今の電子部品・半導体業界の実情です。AIの急速な普及により、工場・物流・医療・介護の現場へと「フィジカルAI(現実世界で動くAI)」の実装が加速する中で、ロジック半導体だけでなく、センサー、マイコン、アナログ・レガシー半導体、高性能電子部品への需要が急拡大しています。さらに、米中対立を背景とした地政学リスクの高まりが、調達先の国内回帰を促しており、中小の電子部品・半導体メーカーにとって「大手から声がかかる機会」が増えることも意味します。
成長の追い風と、構造変化の圧力が同時に押し寄せているのが、今の電子部品・半導体業界です。だからこそ「このまま続けるのか」「誰かに引き継ぐのか」「グループの一員になるのか」——経営者として、今まさに方向性を問われている局面です。
国の半導体戦略が中小企業にもたらす影響
前章で見た通り、電子情報産業の世界市場は拡大を続けている一方、日本の半導体産業の世界シェアはかつての50%から10%未満へと大きく低下しています。この現実を、国はどう捉え、何をしようとしているのでしょうか。その答えが、中小企業の経営判断にも直結します。
2026年3月、経済産業省は「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性について」を公表しました。日本成長戦略会議における議論を踏まえ、AI・半導体分野で今後10年間に50兆円を超える官民投資を実現するフレームを提示した文書です。
【出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性について」2026年3月18日】
中小企業経営者が特に注目すべきは、次の2点です。
① アナログ・レガシー半導体・電子部品分野での「産業再編」が政策課題に明記された
同文書には「足下の地政学的状況を踏まえ、特にレガシー・アナログ半導体、電子部品・蓄電池等のサプライチェーンの強化・最適化や必要な産業再編に向けた取組を進める」と明記されています。国として、この分野の中小企業の統合・再編を政策的に後押しする方向が示されたということです。M&Aを通じた業界再編は、今や個別企業の判断だけでなく、国家戦略の文脈にも位置付けられています。
② 「System to Silicon」戦略が中小単独での生き残りを難しくする
同文書が示す「System to Silicon」とは、最終製品(ロボット・自動車・FA機器など)のアプリケーション側から逆算して、必要な半導体・電子部品を設計・統合するアプローチです。これは、大手メーカーや異業種との緊密な連携なくして実現が難しい戦略です。裏を返せば、技術を持つ中小企業が大手グループの傘下に入り、その戦略の一翼を担うことに、明確な合理性が生まれているということでもあります。
また、中小企業庁「中小企業白書」においても、製造業を中心とした事業承継の遅れとM&A活用の促進が継続的に指摘されています。事業承継・引継ぎ支援センターの機能強化も進んでおり、M&Aを活用した事業継続の選択肢は、制度面でも整備が進んでいます。
【出典:中小企業庁「中小企業白書」】
政策の流れは、電子部品・半導体業界の中小企業にとって、M&Aという選択肢の「追い風」として働いています。これを理解したうえで、自社の立場を客観的に整理することが、今後の経営判断において重要です。
電子部品・半導体業界でM&Aが増えている3つの背景
電子部品・半導体業界における中小企業のM&A(譲渡・売却)が増えているのは、一時的なブームではなく、業界構造の変化を反映した必然的な流れです。特に以下の3つの要因が重なっています。
後継者不在問題:「技術的な後継者」がいない深刻さ
電子部品・半導体メーカーには、創業から30〜40年が経過し、経営者が70代・80代に差し掛かっている企業が少なくありません。中小企業白書によれば、中小製造業における後継者不在率は50%を超えています。
ただし、この業界の後継者問題には独特の深刻さがあります。「資本」を引き継ぐ人間が見つからないだけでなく、「技術的な判断」を任せられる人間がいないという問題が重なります。設計・製造の技術的な意思決定を担える後継者がいなければ、親族内承継や従業員承継でも実質的な事業継続が難しくなります。こうした状況がM&Aを「現実的な解」として選ばせるケースが増えています。
たとえば、特殊なウエハー加工技術を持つ従業員50名規模の企業で、創業者(75歳)の技術判断に依存していたケースでは、後継者候補の幹部社員が「経営はできても、顧客との技術折衝は自分にはできない」と承継を辞退しました。結果的に、同じ領域の技術知見を持つ大手グループへの譲渡によって、技術者の雇用と顧客との関係性を維持したまま事業を継続しています。後継者不在の「深刻さ」は数字ではなく、こうした現場の実態に表れています。
半導体・電子部品製造に求められる設備投資の規模は、年々大きくなっています。製造装置の世代更新、品質管理・検査システムの高度化、ISO認定の維持コストなど、これらに対応しようとすると、売上規模に対して投資額が釣り合わなくなるケースが増えています。
半導体製造の前工程で使用される主要装置(露光機・エッチング装置・成膜装置など)は、1台あたり数億円〜数十億円規模です。後工程のパッケージング・検査装置も高度化が進み、年間売上10億円規模の中小企業にとっては、装置1台の更新が年間売上の数十%に相当するケースも珍しくありません。さらに、自動車向け品質規格(IATF 16949)の維持には継続的な監査対応と設備管理コストがかかり、認定を維持するためだけに年間数千万円の支出が必要になることもあります。
大手グループの傘下に入ることで、こうした投資負担を分散しながら技術開発を継続できる環境を得られます。「独立を守る」ことよりも「技術を続ける」ことを優先したとき、M&Aが最善の選択肢になることがあります。
顧客・市場の変化:「認定取引先」の地位が揺らぎ始めた
電子部品・半導体メーカーの多くは、顧客から厳格な「品質認定」を得て、特定製品・プロセスについて長年の取引実績を積み上げてきました。この「認定取引先」としての地位は、容易に代替が効かない参入障壁であり、M&Aで高く評価されるポイントでもあります。
しかし、顧客企業自身が統廃合・再編を進める中で、「認定が引き継がれるかどうか」「新しい購買窓口との関係が続くかどうか」という問題が生じています。実際に、大手自動車メーカーの購買部門が統合されたことで、従来の直接取引から商社経由の間接取引に切り替わり、取引条件が大幅に変わったという事例も報告されています。
こうした変化に対し、自社単独での対応に限界を感じた経営者が、グループの信用力・交渉力を持つ企業への譲渡を選ぶ動きも出ています。顧客側から見ても、「信頼できる技術を持つサプライヤーが安定した資本基盤を得る」ことは歓迎すべき変化であり、M&Aが取引関係の強化につながるケースもあります。
譲渡企業側のリアル —— 電子部品・半導体メーカーが直面する課題
M&Aを考え始めた経営者がまず感じるのは、「うちみたいな会社が買ってもらえるのか」という疑問です。技術の属人化、特定顧客への依存、古い製造設備——こうした要素を抱えていると、「これでは評価されないのでは」という不安が先に立ちます。しかし、業界をよく知る買い手の目には、こうした要素が違って映ることが多いのも事実です。
M&Aを前にした「よくある不安」とその実態
「 技術が属人化していて、引き継ぎできない 」
設計者・製造技術者にノウハウが集中している状況は、確かに買い手が確認する点です。ただし、買い手が求めているのはノウハウの「完全な文書化」ではなく、「移転できる道筋があるかどうか」です。キーパーソンが譲渡後も一定期間残ることを条件にすれば、技術継承の問題は多くのケースで解決できます。
「 売上が特定顧客に集中している 」
1〜2社の大手メーカーへの依存は、リスクとして見られる一方、「大手に選ばれ続けている会社」という信頼性の証明にもなります。重要なのは数字の集中度より、「なぜその顧客に長年選ばれているか」を言語化できるかどうかです。その答えの中に、買い手が評価する本当の価値が潜んでいます。
「 設備が古くて価値がないのでは 」
製造設備が旧世代でも、特定用途に特化してチューニングされた設備は容易に代替できません。そのラインの立ち上げに費やしてきた年数と経験が、買い手にとっては参入障壁です。「古い」ことと「価値がない」ことはこの業界においてイコールではなく、むしろ希少性として評価されるケースも多くあります。
M&Aを選ぶ動機「 廃業ではなく、次のステージへ 」
こうした不安を越えて譲渡に踏み出す経営者の動機は、年々鮮明になってきています。「自分が引退した後も、社員と技術を生き続けさせたい」——この想いが、廃業ではなくM&Aを選ぶ理由です。
実際、電子部品・半導体メーカーを取得した買い手企業の多くは、既存の製造現場をそのまま存続させ、ブランドや取引先ネットワークも維持します。グループのリソースを活用して設備投資や採用を強化することで、譲渡前より会社が成長する事例も少なくありません。
M&Aは「終わり」ではなく、「継続のための手段」です。最初の不安を丁寧に整理していくと、多くの経営者が「思ったより選択肢はある」という感覚を持ち始めます。
電子部品・半導体業界のM&A事例 —— どんな会社が、なぜ売れているのか
電子部品・半導体分野のM&Aは、大手同士の巨額案件だけではありません。中小企業の事業承継型・技術獲得型の案件も増えており、財務規模よりも「技術」「認定」「人」が評価の中心になっています。以下に、業界の傾向を理解するための特徴的な事例を要約・再構成して紹介します。
信越化学工業による三益半導体工業の完全子会社化(2024年4月)
2024年4月、信越化学工業株式会社は、三益半導体工業株式会社の全株式取得を目的とした公開買付け(TOB)を実施し、完全子会社化することを発表しました。買付価格は1株あたり3,700円、買付代金の総額は約680億円にのぼります。
買い手である信越化学工業は、シリコンウエハーで世界トップシェアを誇る電子材料メーカーです。三益半導体工業とは2005年の第三者割当増資をきっかけに資本関係を結び、以降19年にわたり持分法適用関連会社として加工委託等の取引を続けてきました。しかし、半導体デバイス需要の拡大と技術革新の加速を受け、「関連会社」という緩やかな関係では人材交流や技術情報の共有に制約があると判断。完全子会社化によってグループ一体での意思決定体制を構築し、生産能力の最適配置、研究開発人材の相互活用、海外販路の拡大、サプライチェーンの強靭化など、多面的なシナジー実現を目指しました。
この事例が示すのは、長年の取引関係や技術的な補完関係があっても、資本の一体化なしには実現できないシナジーが存在するという点です。「技術はある、実績もある、しかし資金・人材・販路に限界を感じている」という状況は、電子部品・半導体業界の中小企業に広く共通する課題です。大手グループへの参画を通じて、その壁を突破した事例といえます。
【出典:信越化学工業株式会社│公式プレスリリース】
日清紡ホールディングス、半導体部品メーカー・ディー・クルー・テクノロジーズを完全子会社化(2022年2月)
2022年2月、日清紡ホールディングス株式会社は、エレコム株式会社からディー・クルー・テクノロジーズ株式会社(以下DCT)の全株式を取得し、完全子会社化しました。DCTは資本金7,000万円の中小企業で、ミックスドシグナルLSIの開発に強みを持ち、モジュール基板設計からソフトウェア開発まで一貫した開発体制を有していた半導体部品メーカーです。
買い手である日清紡グループは、2022年1月に新日本無線とリコー電子デバイスを統合して「日清紡マイクロデバイス株式会社」を発足させたばかり。アナログソリューションプロバイダーとしての成長を加速するために必要な技術・人材をM&Aで獲得する方針を明確に掲げており、DCTはその戦略に合致する案件でした。
この事例が示すのは、財務規模ではなく「技術力と開発体制」が評価の中心になるという点です。資本金7,000万円の中小企業であっても、AI・量子コンピューター向けカスタムプロセッサーの開発経験という独自の技術資産が、大手グループにとって獲得すべき価値と判断されました。
【出典:日清紡ホールディングス株式会社│公式プレスリリース】
オムロン、MEMS事業を分社化しミツミ電機へ株式譲渡(2021年10月)
2021年10月、オムロン株式会社は、MEMS事業(圧力センサー・フローセンサー・サーマルセンサーの開発・製造・販売)を会社分割により「滋賀セミコンダクター株式会社」として分社化し、その全株式をミネベアミツミ株式会社の完全子会社であるミツミ電機株式会社へ譲渡しました。対象事業の売上高は23億円(2021年3月期)の中小規模事業です。
売り手であるオムロンの判断の背景には、「リソースをデバイスからソリューション領域にシフトする」という経営戦略の転換がありました。MEMSデバイスはデバイスに注力できる外部パートナーに委ねる方が最善という判断のもと、事業売却に踏み切っています。
一方、買い手のミネベアミツミグループはベアリング・モーター・センサー・半導体を幅広く手がける総合精密部品メーカーです。半導体プロセス開発技術・生産技術およびMEMS事業の関連資産を取得することで、同事業の拡大と新規事業創出における高いシナジー効果を期待しての取得でした。
この事例が示すのは、M&Aは「後継者がいないから」だけが理由ではないという点です。経営戦略の転換による「選択と集中」の手段としてM&Aを活用するケースも業界では増えています。
【出典:オムロン株式会社│公式プレスリリース】
自社の「売却価値」はどこにある? —— 評価されるポイントと準備のステップ
「うちみたいな会社が買ってもらえるのか」という疑問を持つ経営者は多いです。しかし、電子部品・半導体業界では、財務規模が中小であっても高い評価を得るケースは珍しくありません。差を生むのは、自社の強みを「買い手に伝わる言葉」で整理できているかどうかです。
業界で評価される企業価値の源泉
技術の独自性・再現性
特許の有無より、「その製造・設計プロセスが他社に再現できるか」が重要です。ノウハウが属人化している場合でも、移転できる体制があるかどうかが評価されます。
品質認定の取得状況
自動車(IATF 16949)、医療(ISO 13485)、航空宇宙(AS9100)などの国際品質認定は、取得の難易度が高い分、競合優位性として明確に評価されます。「維持しているのが当たり前」と思っている認定が、買い手にとっては大きな参入障壁になっています。
顧客との関係性の深さ
単なる取引額より、「なぜその顧客に選ばれているか」の文脈が重要です。長年の共同開発実績、特定工程での独占的な位置付けなど、こうした関係性の質を言語化できると、評価は大きく変わります。
設備・製造拠点の再現困難性
設備が古くても、そのラインの立ち上げ・チューニングに費やしてきた年数と経験は価値として認識されます。特定製品・工程への特化度が高いほど代替が難しく、評価が上がる傾向があります。
人材と組織の安定性
熟練技術者の在籍年数、現場の離職率、後継幹部の有無。これらは財務数値には表れませんが、買い手が必ず確認する項目です。
譲渡前に取り組める実務的な準備
M&Aを成功させるカギは、「売りに出す前の準備」にあります。買い手候補との交渉が始まったとき、自社の強みをデータ・資料で示せる状態にしておくことが、評価額と交渉スピードの両方に影響します。
具体的には、過去3期分の財務諸表の整理と説明資料の作成、主要顧客との取引概要(量・単価・取引年数・契約形態)の整理、技術・製造ノウハウの文書化(属人的なものを含む)、そして経営者が不在でも業務が回る体制の可視化など、こうした作業が有効です。
これらは、M&Aを進めるかどうかに関わらず、経営の見える化として価値があります。「準備したから必ず売らなければならない」ということはなく、むしろ準備によって「いつでも最善の選択ができる状態」を作ることができます。
電子部品・半導体業界の今後の展望
経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性について」(2026年3月)は、この業界の今後の姿を明確に示しています。AIロボット・自動運転・FAなど、フィジカルAIが社会実装される世界において、電子部品・半導体の需要は構造的に拡大していきます。特に日本が強みを持つアナログ・レガシー半導体、センサー、制御系部品については、AIロボティクスの普及に伴い重要性がさらに高まると見込まれています。
【出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性について」2026年3月18日】
中小企業にとっての「追い風」と「構造的プレッシャー」
この成長トレンドは、中小企業にとって二つの意味を持ちます。
追い風として、需要拡大により自社の技術・製品の市場価値が上がり、M&Aにおける評価額にもプラスに働きます。半導体・電子部品のサプライチェーン強靭化が国策として推進される中、「国内に製造拠点を持つ」こと自体が戦略的価値を持つ時代に入っています。
一方、構造的プレッシャーとして、技術の高度化・投資規模の拡大・グローバル競争の激化が進む中で、中小企業が単独で競争力を維持し続けるハードルは年々上がっています。今は好調であっても、3〜5年後にも同じポジションを維持できるかという中長期の視点が求められます。
「今動く」ことの意味 —— 売り手市場は続くのか
現在の電子部品・半導体業界は、買い手が積極的に技術・人材を求めている「売り手市場」の側面があります。AI需要の拡大、地政学リスクによるサプライチェーン再編、国の産業政策。これらの追い風が重なっている今は、譲渡を検討する企業にとって有利な時期といえます。
ただし、この環境が永続する保証はありません。半導体市場にはシリコンサイクルと呼ばれる好不況の波があり、市況の悪化局面では買い手の投資意欲も後退します。「検討するなら好況期のうちに」「決断するなら選択肢が多いうちに」これは業界に精通したM&Aコンサルタントが共通して指摘するポイントです。
こうした環境の中で、成長の恩恵を最大限に活かすには、単独での事業継続にとどまらず、大手グループの一員として技術・設備・人材の強化を加速させる道、異業種の企業と組んで新しい市場に出ていく道も視野に入れる必要があります。M&Aはこうした可能性を開く手段です。
同文書が示す通り、日本の競争力の源泉は「現場に蓄積された高品質なデータとノウハウ」にあります。その価値を次の時代につなぐためには、経営者自身が早い段階から選択肢を整理し、動ける状態を作っておくことが必要です。
「今すぐ売る」という話ではなく、「自社の価値と選択肢を正しく知る」ことからぜひ始めてみてください。株式会社たすきコンサルティングでは、電子部品・半導体業界をはじめとした製造業の中小企業M&Aについて、業界理解を重視した視点から支援しています。「情報収集したい」「自社がM&Aに向いているか知りたい」という段階からご相談いただけます。
譲渡(売却)に関するお問い合わせ
電子部品・半導体業界では、後継者不在、技術の属人化といった多重構造の課題が重なっており、多くの経営者様が将来への不安を抱えていらっしゃいます。
事業の譲渡や承継についての第一歩は、専門家への相談から始まります。情報収集や自社評価など、ぜひお気軽にお問い合わせください。