
譲渡企業
| 会社名 | 株式会社サイポチ |
| 所在地 | 東京都 |
| 設立 | 2000年 |
| 事業内容 | WEBサイトの企画・編集・開発・運営、デザイン全般の制作、大学向けアプリケーションの開発・製造・販売 |
| 譲渡理由 | 企業の成長発展のため |
譲受企業
| 会社名 | Embrace HD株式会社 |
| 所在地 | 埼玉県 |
| 設立 | 2023年 |
| 事業内容 | グループ各社の経営管理・事業戦略の統括、不動産の管理・運用、コンサルティング、人材派遣・職業紹介 |
| 譲受目的 | 事業規模拡大のため |
一本の電話から始まる飛び込み営業を重ね、大学・総合病院向けのWebサイト制作で確かな信頼を築いてきた株式会社サイポチ。業績は順調だったが、田中前社長は自身の体調をきっかけに、会社の継続と成長を考え、M&Aという選択肢と向き合うことになる。「会社を売る」のではなく、長年育ててきたサイポチらしさを守りながら共に歩めるパートナーを迎えるまでの道のりを、前代表取締役 田中様、部長 中安様それぞれに、M&A成約までの経緯や会社への想いについて伺いました。
紙媒体からWebへ ――大学・病院を支える制作会社の歩み
― まず、田中様のご経歴と創業の経緯、事業内容をお聞かせください。
田中様:
もともと文京区のデザイン事務所に勤めていたのですが、28歳のときに独立して会社を立ち上げました。
会社設立当初は、企業の会社案内や出版社の書籍・雑誌のデザインなど、紙媒体の仕事が中心でした。時代がインターネット中心に変わっていくなかで、事業の方向も大きく転換しました。きっかけは、ビジネスの話だけではなく、「自分の子どもたちが育っていく教育の場をもっとよくしてあげたい」という気持ちでした。そうした想いから、大学向けのWebサイト制作とCMS開発に踏み込みました。今では大学や総合病院向けのWebサービス・CMS導入が売上の約90%を占めるようになりました。Webサイトの企画・編集・開発・運営からデザイン全般までが、主な事業内容です。
― 飛び込み営業はどのくらいの規模で行っていたんですか?
中安様:
全国に大学が約600校あるなかで、まず首都圏の130校を独自で調査して、一校ずつ電話をかけていました。Webサイトがどういう状態か、ここが良い、逆にこんな改善点があるといった内容を整理したうえで、「話だけ聞いてもらえないか」という形でアプローチしていました。当時はスタッフも少人数のなか、みんなで手分けして連絡をとっていましたね。
― 長年にわたってお客様から信頼を集めてこられた秘訣を教えてください。
田中様:
秘訣というほどのことはないのですが、まずは相手の悩みや課題をちゃんと理解することを優先していました。
そのときすぐにお取引につながらなくても、当時のことを覚えていてくださっている方がいて。例えば、昔お渡しした古いパンフレットを今でも大切に持っていてくださっているクライアントもいますし、それがきっかけでまたお取引につながったケースもあります。
12年くらい前に飛び込みで訪問した東京都内の大学様では、3年ほど前に連絡をいただいて。当時の担当の方が今では部長になられていて、大きなお取引に発展しました。あの頃の飛び込みが、すべてではないにしても、かなり身になっています。地道にやってきたことは、ちゃんと返ってくるものだなと感じています。

業績好調のなかでの、M&Aという決断
― M&Aをご検討されたきっかけや背景を教えてください。
田中様:
業績という意味では、帝国データバンクの評価でも同業上位約15%に入っていましたから、後ろめたさはまったくありませんでした。ただ、3年ほど前から体調に不安が出てきて。風邪をひくとあまり無理ができないこともあって、みんなが困ったときに前に立ってあげられない自分というのを感じたんです。やっぱり前に出ていける代表じゃないとダメだと思って、会社の継続と成長のために、2年ほど前からM&Aを検討し始めました。
― M&Aを検討する前に、親族承継や従業員承継などはご検討されたりしましたか?
田中様:
親族や従業員への承継も頭をよぎりました。でも、無理やり社長の立場に上げても厳しいという判断になって。会社を売るというよりは、新しい経営を共に考えられるパートナーを迎えたい、という気持ちになりました。
― 当時、M&Aについての話を聞いたとき、中安様はいかがでしたか?
中安様:
最初に聞いたときは、正直驚きました。売上も悪くないのになぜ?となったのを覚えています。
ただ、社長が以前からM&A関連のDMをずっと保管されていたんです。それだけ前から意識されていたんだなと。その後、顧問弁護士の先生にもご相談して、先生のご紹介を通じてM&A仲介会社から話を聞く機会をいただきました。

"納得のいく出会い"を求めて ――たすきコンサルティングと進んだ道のり
― たすきコンサルティングにご依頼いただくことになった経緯を教えてください。
田中様:
1社、別の仲介会社さんからお話を聞くなかで、たすきコンサルティングさんとは個人的なご縁でつながったんです。当時担当の古川さんとは、もともと知人を通じた紹介という形でお会いすることになりました。
― 他の仲介会社とも比較されていたんですね。それぞれとお会いしてどんな印象を持たれましたか?
中安様:
最初にお会いした別の仲介会社さんとは、少し進め方が合わなくて。私たちが求めているものとは違うなと感じていました。
そのあとにたすきコンサルティングさんとお会いしたのですが、最初から資料をきちんと準備してきてくださって、実際の成約事例も丁寧に説明していただいて。別の仲介会社さんとはトーンも姿勢もまったく違って、こちらの状況や不安をちゃんと汲み取ろうとしてくれている、そういう温かさを感じましたね。自然と明るい気持ちになって帰ったのを覚えています。
正直、M&Aに対してあまり良い印象を持てていないなかでお会いしたのですが、会社がこれからも生き残っていける、今と変わらずやっていける方法を一緒に模索してくれたのは大きかったです。会社がバラバラにされてしまうのではないかという不安があったので、心強かったです。
田中様:
初めてお会いしたときの古川さんの誠実さ、そして古川さんから引き継がれた原田さんと安達さんの対応を見て、これは信頼できるだろうと。そのときは、たすきコンサルティングさんにだったら安心して任せられると思いましたね。
決め手になったのは、成立至上主義ではないところです。原田さんは、「ダメならダメ」とはっきり言ってくれた。提案はするけれど、サイポチにとって相応しいお相手が見つからなかったら止めましょう、と。ただM&Aを成立させるのではなくて、私たちに寄り添いながらお互いが納得のいく出会いをつくろうとしてくれる。その姿勢が気に入りました。
― 実際に当社のコンサルタントとやり取りしていくなかで、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
中安様:
原田さんの的確なリードと助言のおかげで、良いご縁ができたと感じています。こちらが質問をすると、いつもブレのない回答が返ってきて、迷うことなく前に進めました。
安達さんは、緊張する場面で優しい言葉をかけてくださって。メールの返信のスピードも驚くほど速くて、こちらが困る前に返事をいただいていました。お二人とも、私たちのペースに合わせながらしっかりリードしてくださって、不安なときも自然と気持ちが和らぐような雰囲気を作ってくださいましたね。
― なかでも、特に心に残っている場面はありますか?
中安様:
やっぱり、たすきコンサルティングさんを通じて、譲受候補先各社から意向表明書(買収条件の提示)をいただいたときが一番印象に残っています。ずっと緊張していたのを今でも鮮明に覚えていて。でも、当初の想定よりも良い評価をいただけて、本当に良かったと思っています。
― ご成約までのプロセスを振り返って、大変だったことや印象に残っていることはございますか?
中安様:
日々の実務をこなしながら、M&Aの準備を並行して進めていくのがとても大変でした。書類の準備や確認事項も多くて、慌ただしい時期が続きましたね。
田中様:
本当によく頑張ってくれたと思います。中安さんがいてくれたから、ここまで来られたと感じています

会社の"個性"を守り、次の成長へ
― M&Aを進めるにあたって、これだけは守っていきたいという想いや条件はございましたか?
中安様:
サイポチのことをちゃんと考えてくれるか、一緒に歩んでいけるか、大切に思ってくれるか、というところを一番見ていました。実際にEmbrace HD(譲受企業)の方とお会いして話し合うなかで、サイポチの個性をこれからも守っていけると感じることができました。
田中様:
サイポチの個性というのは、ブランドや製品、従業員の雇用、オフィスの環境、自由な社風――すべてだと思っています。それを守りながら、さらに成長できる環境を一緒につくっていける相手かどうか、そこを大切に考えていました。
― ご成約を迎えられて、率直にどんなお気持ちですか?
田中様:
入学式みたいなものかな、と思っています。不安半分、未来への期待半分。成約できたこと自体への喜びはもちろんあります。ただ、高い評価をいただいた分、それに見合う成果を出していかなければという責任も同時に感じています。
自由にやらせてもらえる環境をいただいている分、どう成果を出していくか。
また、今回参画された役員の方たちが事業へ深く関わっていけるよう、その環境をどう整えていくか。そこが今、一番考えているところです。
長年育ててきたサイポチの個性を守りながら、Embrace HD(譲受企業)とともに第二・第三の収益の柱をつくっていけるか。そこが面白いところでもあり、やりがいでもある。投資としての覚悟を持ちながら、これからの展開をしっかりつくっていきたいと考えています
― 最後に、M&Aをご検討されている経営者の方々へメッセージをお願いします。
田中様:
60歳を過ぎて、継いでくれる人がいない会社はたくさんあると思うんです。資本提携もあり、合併もあり、M&Aにはいろんな形がある。テレビのCMのようにM&Aありきで考えるのではなくて、会社の将来を人として相談できる場所があるということ。それがたすきコンサルティングさんの良いところでもあると思いますし、そのことをもっと多くの経営者の方に知ってほしいですね。
中安様:
最初はM&Aに対して、少しマイナスなイメージから入ってしまいましたが、たすきコンサルティングさんとお会いするなかで、M&Aは会社を手放すだけのものではなく、会社を残して次の成長につなげる選択肢でもあるのだと分かりました。M&Aをするしないにかかわらず、まずは話を聞いてみるだけでも経営の視野がぐっと広がると思います。たすきコンサルティングさんのような良いアドバイスをしてくださるM&A仲介会社に相談することで、自分では気づけなかった会社の姿を客観的に見ることができました。
取材日:2026年6月4日

業界特化法人部 部長
原田 欣和
今回のご成約は、私たちにとっても非常に心に残るご縁となりました。
サイポチ様が長年にわたって積み重ねてこられたものは、単なる実績だけではなく、お客様一人ひとりの課題に真摯に向き合い、信頼を地道に育んできた時間そのものだったと感じています。
大学・病院という社会的意義の大きな領域で、目の前の仕事に誠実に向き合い続けてこられた姿勢には、初回のご面談の段階から深い敬意を抱いていました。
だからこそ本件は、その歩みの先にふさわしいパートナーとの出会いをどう実現するかが、仲介会社として何よりも重要なテーマでした。
「サイポチらしさ」をどう守るか。そこに妥協をせず、丁寧に対話を重ねながら進めていったことが、今回のご成約につながった最大の理由だと思っています。
ご両社様が互いの価値観や目指す未来に共感し、「この相手となら次の成長に進める」と思える関係性を築けたことを、心から嬉しく思っています。
また、本件は日々の事業運営と並行しながら、多くの検討事項や準備を進めていただく必要がありました。田中様、中安様をはじめ、関係者の皆さまが真摯に向き合い続けてくださったからこそ、ここまでたどり着くことができたのだと感じています。
今回のご成約は、決して終着点ではなく、新たな始まりです。
サイポチ様がこれまで育んできた個性と強みが、これから先も大切に守られながら、新たな経営資源や視点と結びつくことで、さらに大きな価値を生み出していく。その未来を、今からとても楽しみにしています。
本件が、事業承継や今後の成長に悩む多くの経営者にとって、「M&Aは会社を手放すことではなく、想い(たすき)を未来へつなぐ選択肢でもある」ということを感じていただける一例になれば、仲介会社としてこれほど嬉しいことはありません。