M&AにおけるMBI(マネジメント・バイイン)とは?MBO・TOB・LBOとの違いと成功のポイントを徹底解説

【2025年10月更新】
M&Aの手法の中でも、近年注目を集めているのが MBI(マネジメント・バイイン) です。
MBIとは、外部の経営者や経営チームが資金を調達し、対象企業を買収して経営権を取得する手法 のことを指します。既存の経営陣ではなく、外部の専門人材が新たな視点やノウハウを持ち込み、企業の再成長を図る点が特徴です。
M&Aには、経営陣が自ら買収を行う MBO(マネジメント・バイアウト)、市場を通じて株式を取得する TOB(株式公開買付け)、借入金を活用した LBO(レバレッジド・バイアウト) など、さまざまな手法が存在します。
本記事では、これらの違いを比較しながら、MBIの仕組み・特徴・成功のポイントをわかりやすく解説します。
目次
MBIとは(マネジメント・バイイン)?
MBI(Management Buy-In) とは、外部の経営者や経営チームが自ら資金を調達して企業を買収し、経営権を取得するM&A手法の一つです。
既存の経営陣ではなく、外部の第三者が主体となって経営を担う点に特徴があります。
MBIでは、買収を行う外部の経営者が新しい経営体制を構築し、自身の経験やノウハウを活かして事業の再建や成長を目指します。
外部の視点を取り入れることで、組織改革・新規事業の展開・経営効率の改善などが期待され、企業の再生と価値向上を同時に実現できる手法として注目されています。
MBIが行われる主なケース
後継者不在による事業承継
後継者がいない企業が事業承継を行う際、MBIは非常に有効な選択肢となります。
既存の経営陣に引き継ぎ手がいない場合、外部から経験豊富な経営者を招き入れ、その人物が買収資金を調達して経営権を取得します。これにより、外部の新しい視点やマネジメント手法が導入され、事業の継続と成長の両立が可能になります。
特に中小企業では、後継者不足が深刻化しているため、MBIを活用した承継が有効な解決策として注目されています。
業績不振企業の再建
業績が低迷している企業の立て直しを目的に、MBIが実施されるケースもあります。
外部から経営再建の実績を持つプロフェッショナル経営者を迎え入れ、経営権を取得したうえで事業構造を抜本的に見直すというアプローチです。
新しい経営陣は、財務改善・コスト削減・事業再編・販売戦略の再設計などを実行し、企業価値の回復を図ります。外部経営者による客観的な判断とスピード感のある経営改革が進むことで、再成長への道が開かれます。
事業再編・スピンオフによる独立
企業グループ内での事業再編や、非中核事業のスピンオフ(分離独立)においてもMBIは活用されます。
収益性が低い、または独自の戦略が必要な事業を外部経営者が買収し、独立した経営体制を構築することで、意思決定の迅速化や事業の柔軟性が高まります。
新体制のもとで自由度の高い経営が可能になり、結果として企業価値の向上や競争力の強化につながるケースが多く見られます。。
MBIとMBOの違い
MBO(マネジメント・バイアウト) とは、既存の経営陣が自社やその事業部門を買収し、自ら経営権を取得する手法です。
自社の経営者が主体となるため、意思決定のスピードが上がり、短期的な株主利益に縛られずに中長期的な経営方針を実行しやすくなります。
特に、上場企業が株式を買い取って非上場化(プライベートカンパニー化) を目指す際に活用されることが多く、経営改革や資本効率の向上に有効です。
一方、MBI(マネジメント・バイイン) は、外部の経営者やチームが資金を調達して企業を買収し、新たな視点やノウハウを取り入れて再成長を図ることを目的としています。
つまり、MBOが「内部の体制を維持しつつ経営を強化する」手法であるのに対し、MBIは「外部の力で企業を再生・変革する」手法といえます。
MBIとTOB、LBOの違い
MBI(マネジメント・バイイン) に類似するM&A手法として、TOB(株式公開買付け) や LBO(レバレッジド・バイアウト) があります。
いずれも企業の支配権取得を目的とする点は共通していますが、「買収方法」と「資金調達の仕組み」に明確な違いがあります。
TOB(Take Over Bid:株式公開買付け)とは
TOBとは、買い手(企業や投資ファンドなど)が証券市場を通じて、不特定多数の株主から一定価格で株式を買い取ることで企業の支配権を取得する手法を指します。
市場で株式を直接取得するため、友好的買収(合意型) と 敵対的買収(非合意型) のどちらにも用いられます。
特に上場企業の買収や非上場化(プライベートカンパニー化) を目的としたM&Aで活用されるケースが多く見られます。
MBIとの大きな違いは、TOBが株式市場を通じて株主から直接株式を取得するのに対し、MBIは外部経営者が資金を調達して企業そのものを買収し、経営権を取得するという点です。
LBO(Leveraged Buyout:レバレッジド・バイアウト)とは
LBOは、買収対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に資金を借り入れ、その資金で企業を買収する手法です。
買収後の利益やキャッシュフローを活用して借入金を返済するため、自己資金が少なくても大規模な買収が可能になります。
このスキームは、主にプライベート・エクイティ(PE)ファンド によって活用されることが多く、資金効率の高いM&A手法として注目されています。
MBI・MBO・TOB・LBOの使い分けポイント
| 手法 | 主な目的 | 活用シーン | 資金調達方法 | 買収後の運営 |
| MBI(マネジメント・バイイン) | 新しい経営体制の導入・企業再生 | 外部経営陣による事業承継や再建 | 投資家・金融機関など | 新経営陣による再構築・成長戦略の実行 |
| MBO(マネジメント・バイアウト) | 経営権の確立・迅速な意思決定 | 現経営陣による独立や上場廃止(非公開化) | 経営陣・投資ファンド・金融機関 | 既存体制を維持しつつ経営を強化 |
| TOB(株式公開買付け) | 経営権の取得・市場シェア拡大 | 上場企業の買収、友好的・敵対的買収 | 株式市場で公開買付け | 経営体制を維持する場合も多い |
| LBO(レバレッジド・バイアウト) | 大規模買収の実現・資金効率の向上 | 買収対象企業の資産を担保にした買収 | 銀行融資・投資家からの借入 | 状況に応じて体制維持または刷新 |
■ 外部経営陣の導入によって事業再生や成長を図りたい場合 → MBI
■ 現経営陣が主体となって経営権を確立したい場合 → MBO
■ 株式取得を通じて経営支配や市場拡大を狙う場合 → TOB
■ 資金効率を重視し、大規模な買収を行いたい場合 → LBO
MBIのメリットとデメリット
MBIのメリット
MBI(マネジメント・バイイン)には、外部の経営ノウハウを導入して企業を再成長させられるという大きな強みがあります。
特に「後継者不在」や「業績不振」といった課題を抱える企業にとって、外部のプロ経営者が参画することで新しい戦略とスピード感のある経営改革が可能になります。
外部の経営ノウハウを取り入れ、成長を促進できる
MBIでは、外部経営者が新たな戦略やマーケティング手法を持ち込み、企業の再生や事業拡大を実現します。
既存のやり方にとらわれず、客観的な視点で意思決定を行える点が特徴です。
たとえば、停滞していた市場で外部経営陣の戦略導入により新規顧客を獲得し、収益基盤を再構築した例もあります。
業績不振企業の再建が可能
外部の経営陣が買収後に主導権を握ることで、経営課題の見直しや不採算部門の整理が進みます。
コスト構造の最適化や組織改革により、収益性の向上と財務健全化を同時に実現できます。
実際に、MBIによって経営陣交代後に黒字化へ転換したケースも少なくありません。
後継者不在の事業承継が円滑に進む
MBIは、後継者がいない企業にとって有効な承継手段です。
外部経営者が引き継ぐことで、従業員や取引先との関係を維持しながら事業を継続できます。
また、新経営陣が成長戦略を実行することで、承継後も企業価値を高めることが可能です。
意思決定のスピードと柔軟性が向上
外部経営陣が主導することで、従来のしがらみに縛られずに迅速な意思決定が行えます。
新しいリーダーシップのもとで、経営改革や組織再編がスムーズに進みやすくなります。
特に人事・投資判断のスピード向上は、変化の激しい市場環境で大きな優位性となります。
企業価値を高められる
プロフェッショナルな経営陣が経営効率を改善し、収益力・ブランド力を高めることで企業価値の向上が期待できます。
事業の選択と集中を進めることで、経営資源の最適配分が可能になり、長期的な成長を実現します。
MBIのデメリット
一方で、MBIには経営体制や組織文化の変化に伴うリスクも存在します。外部経営陣との摩擦や資金面での負担など、慎重な準備が必要です。
既存組織との摩擦リスク
新しい経営陣と既存の従業員・経営層との間で価値観や方針の違いが生じ、摩擦が起こる場合があります。
PMI(経営統合)を円滑に進めるためには、コミュニケーションと社内理解の醸成が欠かせません。
経営の安定化に時間を要する
外部経営陣が企業文化や業務プロセスに慣れるまで時間がかかることがあります。特に体制改革や業務改善を進める過程で、一時的に生産性が下がる可能性もあります。
経営者の力量に依存する
MBIの成果は、新たな経営者の能力やリーダーシップに大きく左右されます。業界への理解が浅い場合、改革が思うように進まず、企業価値が下がるリスクもあります。
資金調達リスク
MBIには多額の買収資金が必要となるため、金融機関からの借入や投資家出資に頼るケースも多く見られます。業績改善が遅れた場合、返済負担が財務に重くのしかかる可能性があります。
短期的な利益重視に偏るおそれ
投資ファンドなど外部資本が関与する場合、短期間での利益回収を優先し、長期的な企業価値向上がおろそかになる場合があります。
コスト削減や人員整理に偏ると、従業員の士気低下や事業力の弱体化を招く恐れもあります。
MBIを成功させるためのポイント
外部経営陣の選定と企業文化への適応
MBIの成否を左右する最大の要素は、外部経営陣の選定です。業界知識・リーダーシップ・再建実績などを持つ人物を選ぶことが重要であり、同時に企業文化との親和性も欠かせません。
新たな経営陣のビジョンが既存の従業員や取引先と共有されていれば、スムーズな経営移行が実現します。
PMI(経営統合)の徹底
買収後のPMI(Post Merger Integration:経営統合)を適切に行うことで、組織の安定化と経営効率の向上が期待できます。
特に、新旧経営陣や従業員とのコミュニケーションを密にし、経営方針・人事体制・成長戦略を明確にすることが不可欠です。
初期段階での信頼構築が、その後の経営改革を円滑に進める鍵となります。
短期改善と長期成長の両立
MBI実行後は、短期的な収益改善に加え、持続的な成長戦略の明確化が求められます。
不採算事業の整理やコスト最適化を行いつつ、同時に新市場の開拓や新規投資を推進し、企業の中長期的な価値向上を目指します。
「守りの改革」と「攻めの成長」のバランスを取ることが重要です。
資金調達戦略の最適化
MBIでは、多額の買収資金や運転資金が必要になるため、資金構成の最適化が欠かせません。
自己資金・投資家出資・銀行借入などのバランスを見極め、返済負担を抑えた設計を行うことで、財務リスクを最小限に抑えられます。
また、事業計画に沿った資金繰りのシミュレーションも重要です。
従業員・取引先との信頼関係の維持
経営者の交代は、社内外に大きな影響を与えます。
そのため、経営方針の変更や新体制の目的を丁寧に説明し、従業員の安心感と取引先の信頼を維持することが不可欠です。
現場との対話を重ねることで、経営改革への理解と協力を得やすくなります。
まとめ│MBIを成功に導くために
MBI(マネジメント・バイイン)は、外部経営陣の知見と資金を取り入れ、企業の再生や成長を実現できる強力な手段です。
しかし、成功のためには「適切な経営者の選定」「PMIの徹底」「長期的な戦略構築」など、入念な準備と関係者間の信頼構築が欠かせません。
外部の力を取り入れることは、単なる経営交代ではなく、新たな価値創造の第一歩です。
既存組織の強みを活かしつつ、新経営陣と一体となって変革を進めることで、MBIは企業の第二創業ともいえる成果を生み出します。
株式会社たすきコンサルティングでは、M&Aや事業承継に精通した専門家が、
MBIを含む最適な承継スキームの検討から実行支援までを一貫してサポートしています。
「事業を次世代につなぐ最善の形」を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
当社では、M&Aに精通した経験豊富なコンサルタントが在籍しております。 是非、コンサルタントとの無料相談をご活用ください。
株式会社たすきコンサルティング
お電話でのお問合せ ➿0120-007-888