M&Aのシナジー効果とは?経営者が押さえておきたい仕組みと効果

【2025年9月更新】

近年、企業の成長戦略としてM&A(合併・買収)が注目される中で、よく聞く言葉のひとつに「シナジー効果」があります。シナジー効果とは、M&Aによって企業同士が統合することで、単独では得られなかった相乗効果を生み出すことを指します。

しかし、M&Aが必ずしも成功するわけではなく、シナジーを最大限に発揮するためには、適切な戦略や計画が不可欠です。本記事では、M&Aによるシナジー効果の種類や、企業にもたらす具体的なメリットについて詳しく解説します。

M&Aにおけるシナジーとは?

シナジー(Synergy)とは、2つ以上の要素が組み合わさることで、単独では得られない相乗効果を生み出すことを指します。M&Aにおけるシナジーとは、企業同士が統合することにより、業績向上や競争力強化につながる効果のことを意味します。

例えば、A社とB社がM&Aを行うことで「1+1=2以上」の成果を生み出すことが理想的なシナジーです。単に企業を合併・買収するだけではなく、両社の強みを活かし、組織や資源を効率的に活用することで、より大きな価値を創出できるのがシナジーの本質です。

シナジー効果にはさまざまな種類があり、コスト削減や売上拡大、技術力の向上、市場シェアの拡大などが期待されます。

M&Aで得られるシナジー効果の種類(コスト削減・売上拡大・財務・経営資源)

M&Aによるシナジー効果は、大きく分けて6つの種類に分類されます。それぞれのシナジーがどのような影響を企業にもたらすのか、解説します。

コストシナジー(コスト削減効果)

M&Aによって同業種や関連企業が一体化することで、仕入れや物流の統合、設備の共同利用、人件費や管理コストの削減が可能になります。たとえば、本社機能やシステムを統合することで間接コストを削減できるほか、仕入先との取引規模拡大により調達コストの引き下げも期待できます。コストシナジーは比較的早期に効果を実感しやすいため、M&Aのメリットとして最も注目される分野の一つです。

売上シナジー(売上拡大効果)

M&Aによって顧客基盤や販売チャネルを共有することで、クロスセルや新規市場への参入が可能になります。たとえば、買収先企業の商品を自社の販路に乗せることで売上を拡大できるほか、地域的に補完関係にある企業を統合することで全国展開を加速するケースもあります。売上シナジーは中長期的な収益拡大に直結するため、M&A戦略における重要な目的のひとつです。

財務シナジー(資金調達・税務面でのメリット)

M&Aを通じて企業規模が拡大することで、金融機関からの信用力が高まり、資金調達が有利になります。また、連結決算において損益の通算や繰越欠損金の活用など、税務面でのメリットが得られる場合もあります。さらに、資金繰りの安定や資本効率の向上といった効果も期待でき、財務基盤の強化につながります。財務シナジーは経営の安定性を高め、長期的な事業展開を支える効果があります。

技術・知的資産シナジー(イノベーションの促進)

異なる企業の技術やノウハウ、知的財産を組み合わせることで、新製品や新サービスの開発を促進できます。たとえば、製造業の技術とIT企業のデジタルノウハウを融合することで、従来にはない製品やビジネスモデルを生み出すことが可能です。こうした技術・知的資産シナジーは、競争優位性を高め、市場における差別化戦略を実現する重要な要素となります。

組織・人材シナジー(経営資源の最適化)

M&Aによって経営陣や人材の層が厚くなり、マネジメント力や営業力、専門性の高い人材を確保できる場合があります。特に後継者不足に悩む中小企業にとっては、買収先の人材を活用することで事業の持続性を確保する効果があります。また、組織文化の融合や人材交流によって新たな発想や価値観が生まれ、企業全体の活力向上につながります。

市場シナジー(新規市場参入・シェア拡大)

M&Aによって異なる地域や業界に進出できるのも大きなシナジーです。新しい販売網や顧客基盤を獲得することで、短期間で市場シェアを拡大できるほか、競合他社に対する競争力強化にもつながります。海外企業の買収によってグローバル市場に参入するケースも増えており、市場シナジーは成長戦略を実現する大きな武器となります。

シナジーを生み出すための戦略と準備(M&A前)

M&Aにおいてシナジーを実現するためには、単に企業を統合するだけでなく、戦略的な取り組みが必要です。適切な方法を取り入れることで、M&Aの成功確率を高め、統合後の成長を加速させることができます。ここでは、シナジーを生み出すための具体的な方法を解説します。

① M&Aの目的に合った企業を選定する

シナジーを生み出すためには、M&Aの目的と一致した企業を買収・統合することが重要です。単に市場シェアを拡大するためにM&Aを行っても、実際の事業との相乗効果が見込めなければ期待した成果を得ることは難しくなります。

② 経営資源を統合し、相乗効果を高める

M&A後にシナジーを生み出すためには、両社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を効果的に活用することが求められます。

③ PMI(Post Merger Integration)の徹底

PMI(Post Merger Integration)とは、M&A後の統合プロセスを適切に管理し、組織・業務をスムーズに融合させることです。統合がうまく進まないと、せっかくのM&Aが失敗に終わる可能性があります。

④ 企業文化の融合を図る

M&Aにおける最大の課題のひとつが、企業文化の違いによる対立です。特に、意思決定のスピードや経営スタイルが異なる場合、統合がうまく進まない原因になります。両社の経営スタイルや組織風土を事前に分析し、違いを把握することが大切です。

シナジー効果を最大化するためのポイント(M&A後のPMI)

M&Aを成功させるためには、シナジー効果を最大限に引き出し、統合後の企業価値を向上させることが重要です。しかし、適切な計画や実行がなければ、期待したシナジーを得られず、逆に統合の混乱を招くこともあります。ここでは、M&Aによるシナジーを最大化するために重要なポイントを解説します。

① 明確なM&Aの目的を設定する

M&Aを成功させるためには、なぜM&Aを実施するのか、その目的を明確にすることが重要です。主な目的として、市場拡大技術強化コスト削減競争率向上などが挙げられます。目的が曖昧なままM&Aを進めると、統合後に期待したシナジーが得られず、経営の方向性がぶれる可能性があります。

② 統合プロセス(PMI)の計画を立てる

PMI(Post Merger Integration)とは、M&A後の企業統合プロセスのことを指します。シナジーを最大限に発揮するには、統合計画を事前に策定し、円滑に実行することが不可欠です。PMIの主な要素として、組織・人材の統合業務プロセスの統一ブランド・顧客関係の維持が挙げられます。PMIチームを設置し、統合プロセスを明確に管理すると良いでしょう。

③ 企業文化の違いを考慮する

M&Aが成功しない主な要因のひとつに、「企業文化の違いによる対立」があります。異なる組織風土を持つ企業が統合すると、意思決定のスピードや価値観の違いが障壁となり、シナジーの発揮を妨げることがあります。事前に企業文化の違いを分析し、統合後の方向性を明確にすることが重要です。

④ 収益とコストのバランスを考える

M&Aによるシナジーには「コスト削減」と「売上拡大」の両面がありますが、どちらを優先すべきかを慎重に判断することが大切です。例えば、短期的な効果を狙うならコスト削減を優先(業務統合、人員削減など)し、長期的な成長を狙うなら売上拡大を重視(新市場開拓、商品開発など)するなど、財務シミュレーションを実施し、M&A後の収益構造を可視化することが大切です。

⑤ 統合後の成功指標(KPI)を設定する

M&A後にシナジー効果が適切に発揮されているかを測定するために、KPI(重要業績評価指標)を設定し、進捗を管理することが重要です。KPIの例としては、売上シナジー(M&A後の売上成長率、クロスセルの成果)、コストシナジー(管理費の削減率、業務効率化の達成度)、顧客維持率(M&A後の顧客離脱率、リピート率)、従業員満足度(従業員のエンゲージメントスコア)などが挙げられます。M&Aの目的に応じた具体的な指標を設定することが大切です。

まとめ│M&Aのシナジー効果を成功につなげるために

M&Aにおけるシナジー効果は、単なる企業の統合にとどまらず、コスト削減や売上拡大、財務基盤の強化、新たな技術や人材の獲得、市場拡大など、多方面にわたる成長の可能性をもたらします。しかし、その効果は自動的に得られるものではなく、適切な相手企業の選定・事前のデューデリジェンス・統合後のPMI(経営統合プロセス) をいかに実行できるかが成功の分かれ目となります。

シナジー効果を最大限発揮するためには、経営戦略に沿ったM&Aの設計と、専門家のサポートを受けながら進めることが不可欠です。短期的な成果だけにとらわれず、中長期的な成長を見据えて統合を進めることで、真に価値のあるM&Aを実現できます。

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