M&Aのメリット・デメリットとは?事業承継や会社売却時に押さえておきたいポイント

M&Aは、近年ますます事業承継や経営戦略の一環として注目されています。後継者不足や成長戦略の実現を背景に、中小企業においてもM&Aの活用事例が増加している状況です。
しかし、「M&Aにはどんなメリットがあるのか?」「逆に、どんなデメリットやリスクがあるのか?」という疑問や不安を感じている経営者の方も少なくありません。
本記事では、M&Aのメリットとデメリットをわかりやすく整理し、事業承継・会社売却の成功に向けたポイントについても解説します。
これからM&Aを検討したい方や、自社にM&Aが適しているのか知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
売手企業からみたM&Aのメリット
事業承継の実現
後継者不足の解決です。自分の手で後継者を選定するリスクを減らすことができます。
2023年1月に行われた中小企業の調査によると、中小企業のうち後継者が決定している企業は1割程、5割超が廃業を予定しており、後継者がいない理由はそのうちの2割を占めています。
【出典:「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」】
経営者の高齢化が進んでいる日本では、その解決策としてのM&Aによる売却はメリットが大きく、市場としてのポテンシャルも大きいことがいえるでしょう。
さらに、会社を存続させることで事業を継続させることができ、取引先との関係性や従業員の雇用を守ることができます。
資産の現金化
M&Aによる株式や事業を売却することで、まとまった資金を得られるというメリットがあります。買手企業が売手企業の価値を高く評価するほど、多くの資金を得ることができます。その資金をリタイア後の生活や新たな挑戦に活用する経営者も多くいらっしゃいます。
成長機会の提供
買手企業の資金力やノウハウを活用することで、事業がさらなる成長を遂げる可能性があります。
売手企業が単独では実現しにくかったことを、買手企業の資源や能力を通じて可能にする大きなメリットです。これにより、売手企業側は会社を手放しても、自分の築いた事業がさらに大きく発展していくという安心感を得られる点が特筆されます。
責任の軽減
会社を経営するうえでは、日々の運営や意思決定において大きな責任が伴います。特に、中小企業の場合、経営者と株主であるオーナーが同一であることがほとんどで、実質1人で経営責任を負っているのが実情です。M&Aにより経営から引退することで、経営者としての責任(日々の経営判断やリスク対応)から解放されます。
また、経営者が個人的に負担していた融資の保証や会社の財務リスクが、M&Aにより買手企業に引き継がれる場合があります。
売手企業からみたM&Aのデメリット
ここまでM&Aにおける売手企業のメリットを挙げてきましたが、同様にデメリットもあるので注意が必要です。
買手企業との価値観の違い
売却後、企業文化や経営方針の違いから従業員や顧客に影響が出る場合があります。例えば、これまでの経営理念や社風が変化し、従業員が混乱する可能性があります。また、新しい管理体制やルールに適応できず、優秀な人材が流出してしまうリスクがあります。
しかし、企業文化が統一されることで雇用の安定性が増し、充実した福利厚生や教育制度、キャリアアップのチャンスも得やすいです。総合的に働きやすくなる場合も多いため、M&Aは従業員にとっても大きなメリットになる場合もあります。
売却価格が期待に届かない
M&A交渉で提示される売却価格が、経営者や株主の期待に達しない場合があります。特に、業績が悪化している場合は、適正価格を得るのが難しくなります。
その場合、売却前に自社の業績を改善することで買手企業にとっての魅力を高めることもできます。 また、市場環境や業界の動向を考慮して、最適な売却時期を選ぶことも重要です。
買手企業からみたM&Aのメリット
短期間での事業の拡大
新しい事業をゼロから始めることなく、短期間で新しい市場や地域へ進出することができます。例えば、海外市場に進出する際、現地の市場に詳しい企業を買収すれば、事業展開の準備期間を大幅に短縮できます。
また、既存の事業を成長させる際にもM&Aを活用するケースが多いです。この場合、既存事業とのシナジー効果(売上拡大・コスト削減)を狙うことができます。同じ業界の企業を買収して生産設備や販売ネットワークを統合することで、重複コストを削減し、効率を改善できます。
規模の拡大と競争力の強化
M&Aによって、自社の規模を一気に拡大し、競争優位を確保できます。例えば、同業他社を買収することでシェアを拡大し、価格競争力や交渉力を強化できます。
技術やノウハウの獲得
買収先の企業が持つ独自の技術や専門知識を自社に取り込むことができます。具体例として、医療機器メーカーが専門的な研究者を抱える企業を買収することで、研究開発力を強化します。
ブランド力や顧客基盤の獲得
買手企業が持つブランド力や顧客リストを活用することで、自社の事業をさらに成長させることができます。例えば、老舗ブランドを持つ企業を買収し、既存事業と組み合わせることで新しい顧客層を開拓できます。
買手企業からみたM&Aのデメリット
買収コストの負担が大きい
M&Aは一般的に高額な投資を伴います。買収価格が市場価値や将来の利益に見合わない場合、過剰な負債を抱えるリスクがあります。買収後の事業収益で投資回収が難しくなるケースも考えられます。理想の売手企業であったとしても、厳密なデューデリジェンス(適正価格の評価)と慎重な買収価額の検討が大切です。
統合(PMI)の難しさ
買収後の統合が適切に行われないと、シナジー効果を得られない場合があります。さらに、組織文化の違いや運営方針の不一致により、従業員のモチベーション低下や業績悪化が生じる可能性があります。
大企業が買収したスタートアップのスピード感やイノベーション文化を活かせず、買収の目的を達成できないといった事例もあります。シナジー効果を生み出すためにもPMI計画の綿密な準備が大切です。
さらに、従業員の離職リスクはM&Aにおける重大な課題の一つですが、事前準備や適切な対応によって大幅に軽減できます。買収後の成功には、従業員の協力が不可欠であるため、慎重な配慮が必要です。
想定外のリスクの顕在化
デューデリジェンスで全てのリスクを把握しきれないこともあります。その場合、売手企業に隠れたリスク(負債、法務問題、規制違反など)が存在する場合、M&A実施後に損失が発生する可能性があります。売り手自身も気付いていないケースもあることから、前持った潜在リスクのシナリオ分析が大切です。
既存事業への影響
買収のためにリソースを割きすぎると、既存事業が疎かになる場合があります。M&Aに集中するあまり、既存事業の顧客対応やイノベーションが停滞し、競合他社にシェアを奪われる可能性もあるので、経営リソースのバランス管理が重要になってきます。
事業承継や会社売却時に押さえておきたいポイント
M&Aによる事業承継や会社売却を成功させるためには、単に「売る」ことだけを考えるのではなく、事前準備や進め方が非常に重要です。以下のポイントを押さえておくことで、スムーズかつ納得のいくM&Aを実現しやすくなります。
1.事前に会社の現状を把握し、整理しておく
- 財務状況(決算書、資産・負債状況など)
- 法務・契約関係の確認(重要契約書や許認可の有無など)
- 人材・組織の状況(主要人材の把握、雇用契約など)
自社の「見える化」を行い、M&A時の説明責任や交渉をスムーズに進められるようにしておくことが大切です。
2.会社の「強み」や「魅力」を整理して伝える準備をする
- 事業の成長性・市場性
- 他社との差別化要素(技術力、ブランド力、顧客基盤など)
- 継続性・再現性のある収益モデルかどうか
買い手側にとって「選ばれる企業」になるための整理が重要になります。
3.M&Aの目的・譲渡後のビジョンを明確にしておく
- 経営者自身の希望(完全引退か、一定期間関与を希望するかなど)
- 会社や従業員の将来像(従業員の雇用継続や福利厚生など)
- 地域社会・取引先との関係維持に対する意向
自社の将来像や譲渡の目的が明確であれば、よりマッチする買い手候補と出会いやすくなります。
4.信頼できる専門家に相談し、サポート体制を整える
- M&A仲介会社・FA(フィナンシャルアドバイザー)
- 公認会計士・税理士(税務面の確認)
- 弁護士(法務面・契約チェック)
経験豊富な専門家の力を借りることで、リスク回避や取引条件の最適化が可能になります。
5.買い手候補の選定と交渉は慎重に進める
- 価格だけでなく、事業承継後のシナジーや企業文化の相性も重要
- 従業員や取引先の安心感を考慮した交渉を心掛ける
「誰に承継するか」こそ、事業承継の成否を大きく左右するポイントになります。
まとめ│M&Aのメリット・デメリット
M&Aは、事業承継や会社の将来を考えるうえで非常に有効な選択肢のひとつです。
メリットとしては、企業価値の最大化や従業員の雇用維持、事業の発展といった点が期待できます。
一方で、デメリットやリスク(情報漏洩リスク、文化の不一致、手続きの複雑さ)も存在するため、事前の準備と正しい進め方が不可欠です。
大切なのは、自社の状況や目的に合ったM&A戦略を立てることと、信頼できる専門家と連携しながら進めていくことです。
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