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【2026年最新版】金属加工業界の現状とM&A|譲渡・売却を検討する経営者が知るべき全体像   

金属加工業界は、日本の製造業を支える基盤産業です。しかし近年は、人材不足や設備投資負担、需要構造の変化などにより、従来の経営モデルが通用しにくくなっています。

こうした環境の中で注目されているのが、M&A(譲渡・売却)という選択肢です。単なる事業の手放しではなく、技術や雇用、取引関係を次世代へつなぐ手段として、活用が広がっています。

本記事では、金属加工業界の市場構造や課題を整理したうえで、M&Aの背景やメリット、検討時のポイントを解説します。今後の経営判断を考えるうえでの参考としてご覧ください。

【記事提供:株式会社たすきコンサルティング】
株式会社たすきコンサルティングは、中小企業の事業承継・M&Aを専門に支援するM&A仲介会社です。約20年にわたる財務コンサルティングを基盤に、公認会計士・税理士などの専門家と連携しながら、全国の中小企業を対象にM&Aの検討から成約までをサポートしています。
中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録し、一般社団法人「M&A支援機関協会」にも加盟しています。
※中小M&Aガイドライン(第3版)遵守の宣言について

金属加工業界とは?│市場規模と産業構造

金属加工業界とは、鉄やアルミニウムなどの金属素材に対し、切削・プレス・鋳造・鍛造などの加工を行い、部品や製品へと仕上げる産業です。自動車や産業機械、電子機器など幅広い分野に関わり、日本の製造業を支える基盤的な役割を担っています。

製造業全体の製造品出荷額は約373兆円(2023年)と、日本経済の中でも大きな割合を占めています。その中で金属加工に関連する分野は複数の産業にまたがって存在しており、単一の産業分類として捉えにくい点もこの業界の特徴の一つです。

例えば、製造品出荷額で見ると、

輸送用機械器具製造業:約80兆円
生産用機械器具製造業:約25兆円
金属製品製造業:約17兆円

といった規模となっており、金属加工はこれらを横断的に支える存在です。
特に金属製品製造業は約17兆円規模を有し、事業所数は全製造業の中で最多となる約3万368事業所(構成比13.7%)を占めており、中小企業を中心としながらも金属加工の基盤を担う重要な分野です。

【出典:2024年経済構造実態調査二次集計結果│経済産業省

産業構造の面でも特徴的な点があります。金属加工業界は全体的に中小企業が中心の分散型構造を持っており、大手メーカーの下に一次・二次・三次と複数層の下請け企業が存在する多層的なサプライチェーンが形成されています。こうした構造は、高い技術の専門特化を生む一方で、発注元の動向に業績が大きく左右されやすいという特性も持ち合わせています。

金型産業を例にとると、その構造はより鮮明です。日本金型工業会によれば、2023年の国内金型産業における事業所数は約4,300事業所、就労者は約7.5万人。規模別では9人以下の事業所が全体の61.1%を占め、中小零細企業が産業の中核を担っている実態が浮かび上がります。ピーク時(1991年)には生産高約2兆円・事業所数約1.3万を誇っていた同産業も、現在の生産高は約1兆4,332億円まで縮小しており、業界全体の構造変化が数字にも表れています。

【出典:2023年(令和5年)「全国金型統計調査」│経済産業省

このように金属加工業界は、複数の製造業領域を支える「中核的な存在」であると同時に、中小企業が中心となる分散型・多層的な産業構造を持つ点が特徴です。

金属加工業界の現状とM&Aが注目される背景

近年、金属加工業界ではM&A(譲渡・売却)が現実的な選択肢として広がっています。その背景には、業界を取り巻く外部環境の変化が重なっています。

まず大きいのが、需要構造の変化です。特に自動車業界ではEV化が進み、エンジン関連部品の需要減少が見込まれています。金型産業においても、需要業界別の生産金額構成比(2024年)を見ると、自動車・二輪・輸送用車両機器が全体の72.0%を占めており(出典:日本金型工業会)、自動車産業の動向がそのまま業界全体の業績に直結する構造となっています。EVシフトによるエンジン部品需要の減少は、こうした依存度の高い企業ほど経営に深刻な影響を与えます。

また、製造業全体でサプライチェーンの見直しが進んでおり、調達先の集約や内製化の動きも強まっています。これにより、従来の取引関係だけに依存した経営モデルは維持が難しくなりつつあります。

さらに、業界の担い手不足も重要な背景として挙げられます。

2024年経済構造実態調査によれば、金属製品製造業の従業者数は約60万2,242人で、前年比0.9%の減少となっています。製造業全体でも従業者数は前年比0.2%減少しており、人材の流出・高齢化が着実に進行しています。経営者自身の高齢化と後継者不在が重なる企業では、廃業か事業承継かという現実的な選択を迫られるケースが増えています。

こうした環境変化の中で、同業他社や大手メーカー、商社によるM&Aが活発化しています。背景には、加工技術の獲得、生産拠点の確保、サプライチェーンの強化といった明確な戦略があります。

つまり金属加工業界では、M&Aは一部の例外的な動きではなく、業界構造の変化に対応するための手段として広がっているのが現状です。

金属加工業界が直面する主な課題

こうした外部環境の変化に加え、金属加工業界では企業内部にも構造的な課題を抱えています。特に中小企業では、以下のような問題が経営判断に直結しています。

人材不足と技能継承の停滞

金属加工の現場では、熟練技能者の高齢化が進んでいます。加工条件の最適化や段取りといったノウハウは経験に依存する部分が多く、若手への継承が進みにくい状況です。

さらに採用環境も厳しく、「人が採れない・育たない」という状態が続いています。その結果、特定の技能者に依存する体制となり、事業継続リスクが高まっています。

設備投資負担と収益性のジレンマ

金属加工は設備産業であり、加工精度や生産性を維持するためには継続的な設備投資が不可欠です。近年は自動化・高精度化への対応も求められ、投資負担は増加しています。一方で、下請構造の中では価格転嫁が難しく、コスト上昇を吸収できないケースも多く見られます。結果として、「投資は必要だが回収が難しい」というジレンマに直面しています。

取引先依存と受注の不安定性

特定の取引先や業界に依存したビジネスモデルも、金属加工業界の特徴の一つです。長年の取引関係は強みである一方、主要顧客の動向がそのまま業績に影響するリスクを抱えています。例えば、生産調整や発注方針の変更によって、受注が急減するケースも珍しくありません。

技術・ノウハウの属人化

加工技術や品質管理のノウハウが個人に依存しているケースも多く見られます。図面だけでは再現できない暗黙知が多く、標準化が難しい点が特徴です。そのため、キーマンの退職や離職が、そのまま品質低下や取引継続リスクにつながる可能性があります。

単独経営の限界

これらの課題が複合的に重なる中で、単独企業での対応には限界が見え始めています。人材確保、設備投資、販路開拓といった経営課題を、自社単独で解決することが難しくなっているのが実情です。

金属加工業界におけるM&Aのメリット

ここまで見てきたように、金属加工業界では外部環境の変化と内部課題が同時に進行しており、単独での経営継続が難しくなっているケースも増えています。こうした状況の中で、M&A(譲渡・売却)は単なる出口戦略ではなく、事業を継続・発展させるための現実的な選択肢として位置づけられています。

① 技術・技能を“消さずに残せる”

金属加工業において最大の資産は、設備だけでなく現場に蓄積された技術やノウハウです。しかし、後継者不在や人材不足によって廃業を選択した場合、それらはすべて失われてしまいます。

M&Aであれば、第三者へ事業を引き継ぐことで、

  • 加工技術
  • 現場ノウハウ
  • 品質管理の仕組み

といった無形資産を維持することが可能です。

② 従業員の雇用と現場を守れる

中小の金属加工企業では、長年働いてきた技能者が会社の中核を担っています。廃業した場合、こうした人材の雇用は失われてしまいます。

一方、M&Aであれば、

  • 雇用の継続
  • 工場の維持
  • 技能者の活躍機会の確保

が可能になります。

③ 設備・経営資源を有効活用できる

金属加工業は設備産業であり、多額の投資が行われています。しかし、受注減や人材不足によって設備の稼働率が低下している企業も少なくありません。

M&Aにより、

  • 買い手企業の案件を取り込む
  • 設備の稼働率を向上させる
  • 遊休資産を活用する

といった形で、既存の経営資源を最大限活かすことが可能になります。

④ 取引基盤の維持・拡大につながる

長年築いてきた取引関係は、金属加工企業にとって重要な資産です。しかし、廃業すればそれらの関係は途切れてしまいます。

M&Aによって、

  • 既存顧客との取引を継続
  • 買い手企業の販路と接続
  • 新たな案件の獲得

といった展開が期待できます。

⑤ 単独では難しい課題を解決できる

これまで見てきたように、人材確保や設備投資、受注の安定化といった課題は、単独企業で解決するには限界があります。M&Aにより、グループとしての採用力向上や設備投資の分担、事業ポートフォリオの分散が可能となり、経営の安定性を高めることができます。

金属加工業界のM&A事例

影山グループによるフジマシンの子会社化(2024年12月)

影山グループ(代表企業:株式会社影山鉄工所)は、事業承継支援と技術伝承の強化を目的として、株式会社フジマシンの全株式を取得し、同社を子会社化しました。

フジマシンは静岡県富士市を拠点に、自動車部品の機械加工や溶接加工、特装車機能部品の製造などを手がける金属加工企業です。優れた加工技術を有する一方で、後継者不在という課題を抱えており、事業継続に向けた選択肢としてM&Aが実行されました。

本件により、影山グループは製造業に特化したグループ経営のノウハウや業務改革、デジタル化の知見を導入し、収益力の向上と技術継承の両立を図る方針です。

金属加工業界においては、本件は、後継者不在を背景とした事業承継型M&Aの一例といえます。

【出典:株式会社影山鉄工所│PR TIMES

セレンディップ・ホールディングスによるイワヰの子会社化(2024年10月)

セレンディップ・ホールディングス株式会社は、製造業の事業承継および成長支援を目的として、株式会社イワヰの株式を取得し、同社を子会社化しました。

同社は中堅・中小製造業の経営支援や事業再生を強みとしており、グループ化を通じた経営基盤の強化と成長支援を推進しています。一方、イワヰは三重県津市を拠点に、自動車のボディ・シート部品の金属プレス・溶接加工を主力とする、設立60年以上の歴史を持つ金属加工メーカーです。コロナ禍の影響で経営が困難な局面を迎えましたが、大型プレス機などの優れた設備と加工技術が評価され、M&Aによる事業再生・継続が実現しました。

金属加工業界においては、本件は、経営難に直面した企業がM&Aを通じて事業を再生・存続させた一例といえます。優れた技術や設備を持ちながらも単独での経営継続が難しい状況において、M&Aが「廃業ではなく次につなぐ選択肢」として機能した事例として参考になります。

【出典:セレンディップ・ホールディングス株式会社│PR TIMES

フジオーゼックスによるピーアンドエムの子会社化(2024年3月)

フジオーゼックス株式会社は、事業基盤の強化を目的として、ピーアンドエム株式会社の株式を取得し、同社を子会社化しました。

フジオーゼックスはエンジンバルブを中心とした自動車関連部品の製造を主力としており、高い加工技術と品質管理力を強みとしています。一方、ピーアンドエムは精密加工分野における製造機能を有しており、本件は両社の技術および生産体制の補完を図る取り組みと位置づけられます。

本件を通じて、加工領域における対応力の強化と事業領域の拡張が進められ、自動車部品分野における競争力向上が期待されます。

金属加工業界においては、本件は、精密加工技術の獲得と生産体制強化を目的とした戦略的M&Aの一例といえます。

【出典:フジオーゼックス株式会社│公式プレスリリース

愛三工業によるアイエムアイの子会社化(2023年11月)

愛三工業株式会社は、電動化製品事業の強化を目的として、株式会社アイエムアイの全株式を取得し、同社を子会社化しました。

同社はカーボンニュートラル対応の一環として電動化領域への展開を進めており、電気自動車向け電池部品の生産体制構築に取り組んでいます。本件では、アルミニウムやステンレスの深絞り加工技術を強みとするアイエムアイを取り込むことで、電池関連部品分野における技術基盤の強化を図る狙いがあります。特に、金属プレス用金型の設計・製作を内製化するなど、高い金属プレス加工技術を有している点が特徴です。

金属加工業界においては、本件は、EVシフトを見据えた加工技術の獲得と新領域参入を目的としたM&Aの一例といえます。

【出典:愛三工業株式会社│公式プレスリリース

金属加工業界のM&Aを成功させるための留意点

金属加工業界におけるM&Aは、課題解決の有効な手段となる一方、進め方を誤るとM&A後に問題が生じるケースもあります。特に金属加工業界では、設備や財務だけでは測れない現場力が重要となるため、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

技術・現場力を正しく評価する

金属加工企業の価値は、設備や売上だけで決まるものではありません。加工条件の最適化や段取り、品質の安定性といった現場のノウハウが競争力の源泉となっています。これらは数値化しにくいため、財務情報だけで判断すると企業価値を見誤る可能性があります。現場を確認し、実際の加工力を把握することが重要です。

キーマン人材の流出を防ぐ

金属加工の現場では、特定の技能者や管理者が品質や納期を支えているケースが多く見られます。M&A後にこうした人材が離職すると、品質低下や取引先からの信頼低下につながるおそれがあります。処遇や役割を明確にし、早い段階から丁寧なコミュニケーションを行うことが不可欠です。

取引先との関係維持を重視する

長年の信頼関係に基づく取引が多い金属加工業界では、経営体制の変化が取引先の不安につながることがあります。品質や供給体制に問題がないことを適切に説明し、安心感を持ってもらうことが重要です。取引関係の維持は、事業継続に直結します。

PMI(統合プロセス)を丁寧に進める

M&Aは成立がゴールではなく、その後の統合プロセスが成否を左右します。作業標準や品質基準、現場文化の違いを無理に統一しようとすると、現場の混乱を招く可能性があります。段階的に統合を進め、現場の納得感を得ながら調整していくことが重要です。

価格だけで判断しない

M&Aでは譲渡価格に目が向きがちですが、金属加工業界では従業員の雇用や技術の承継、取引先との関係といった要素が長期的な価値に大きく影響します。短期的な条件だけでなく、「誰に引き継ぐか」という視点を持つことが重要です。

金属加工業界の今後の展望とM&Aという選択肢

金属加工業界は今後も製造業の基盤として重要な役割を担い続けるでしょう。一方で、EVシフトによる需要構造の変化、慢性的な人材不足、設備投資負担といった課題は、今後さらに顕在化していくと考えられます。

発注側からは品質や短納期に加え、複数工程への対応や提案力など、より高い付加価値が求められる傾向も強まっています。対応できる企業とそうでない企業の間で、受注格差が広がっていく可能性も否定できません。

こうした環境の中で、M&Aは「事業を畳む選択肢」ではなく、自社の技術・人材・取引先を守りながら、次のステージへつなぐ手段として改めて注目されています。廃業を選んだ場合に失われるもの——長年培った加工技術、熟練技能者の雇用、信頼関係を築いた取引先——を、M&Aによって次世代へ引き継ぐことができます。

重要なのは、「売るかどうか」という判断よりも先に、「自社に何があり、それをどう活かせるか」を整理することです。自社の強みや課題を客観的に把握することが、M&Aを含めたあらゆる経営判断の出発点になります。

いますぐ結論を出す必要はありません。ただ、環境が変化し続ける中で、早い段階から選択肢を広げておくことが、納得のいく意思決定につながります。


譲渡(売却)に関するお問い合わせ

金属加工業界では、慢性的な人材不足と設備投資負担だけでなく、設備投資負担と収益性のジレンマといった多重構造の課題が重なっており、多くの経営者様が将来への不安を抱えていらっしゃいます。
事業の譲渡や承継についての第一歩は、専門家への相談から始まります。情報収集や自社評価など、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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